2017年4月4日掲載

防災スキルは現代の基礎教養である

セーフティマネジメント教育研究センター

齋藤 富雄 センター長

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2017年4月、関西国際大学人間科学部経営学科に、新コース「セーフティマネジメントコース」が始動する。防災や危機管理の知識を磨き、安全で安心な社会づくりに貢献する人材を育てるプログラムだ。コース新設に先立って、2016年春に「セーフティマネジメント教育研究センター」が発足し、防災関連の教育プログラムが開発された。ゆくゆくは、セーフティマネジメントの基本的な知識を全学生に提供できる体制をつくるのが目標だ。そのキーマン、同センター長の齋藤富雄教授に話をうかがった。

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―「安全・安心」をすべての学生に新時代の防災教育がスタート>


「万一の事態に直面したとき、自分や家族の命を、また愛する地域を守ることができるでしょうか。災害に適切に対処するためにはさまざまな分野を横断する知識と、それらを結びつける思考力、行動力などの総合力が必要です。そんな力を持つ若者を育成したいと考えています」と齋藤富雄教授は言う。


 政府の地震調査研究本部によれば、30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は70%。さらに東海地震、東南海地震と連動した巨大地震が発生する可能性もある。危機と隣合わせの時代の教育の役割とは何か。「安全・安心のための教育」は、関西国際大学が出したひとつの答えなのだ。
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「災害に強いまちづくりのためには専門家の育成も大切ですが、同時に基本的な知識を有する人材が地域の防災力を高めていくことが大切です。防災はいわば現代を生きる人にとっての基礎教養なのです」


安全・安心を教育の新たな核に――。そんなビジョン実現の第一歩として、2016年秋学期からは防災士を育成する「防災入門」がすでに開講しており、現在52人の学生が受講している。


―震災の教訓と経験を生かし次代の防災リーダーを育成する


 齋藤教授と防災の関わりは22年前にさかのぼる。1995年の阪神・淡路大震災での県職員としての対応、そして翌年の1996年、全国初の危機管理責任者ポストとして兵庫県に設けられた「防災監」に就任し、さまざまな災害や非常事態の指揮にあたったのだ。兵庫県広域防災センター(三木市)を中心とした防災ネットワークの構築や、防災関連の国際機関の誘致・集積にも尽力し、防災マニュアルづくりや情報システムの再構築などのソフト整備も進めた。先駆的なこれらの取り組みは現在、全国の危機管理システムづくりのモデルになっている。こうして防災施策の最前線を走ってきたからこそ、齋藤教授は、防災意識の希薄化に強い不安を感じているという。


「22年前に比べて、災害のリスクはむしろ上がっています。しかし神戸でも震災を経験していない市民が6割以上を占めるようになり、その記憶はすでに希薄化しています。次なる巨大地震も切迫しています。そんな中、特に若い世代の防災意識を高めなければ大変なことになる。危機感を持っています」


 そのようなとき、関西国際大学の濱名篤学長から「セーフティマネジメント教育を全学的に展開したい」というビジョンを聞き、その先見性に深く共感したという。都市近郊の三木市、人口集中地の尼崎市という防災課題の異なる2つの場所にキャンパスを構え、広域防災の拠点である三木総合防災公園や、神戸市内に集積する防災関連機関とも連携できる恵まれた立地。この条件を生かせば、先例のないカリキュラムが実現できるはずだ。齋藤教授がそう考えた通り、フィールドワークをたっぷり盛り込んだ実践的かつ先進的なカリキュラムが完成しつつある。  

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 「防災の基本はいのちを守ること。災害に立ち向かう力とは、人を思いやる力でもあるのです。安全・安心教育はまさに本学の建学の精神『愛を以て園と為す』を具現化したプログラムといえます」 大学での学びをもとに、卒業生一人ひとりが、職場や地域で防災リーダーとして活躍する。そんな未来は遠くない。



KEYWORDS


※防災士 社会のさまざまな場で減災と社会の防災力向上が求められる中、そのための十分な意識、知識、技能を有していることを証明する資格。災害発生時には、地域や職場での避難、救助、避難所の運営、自治体やボランティアと協働した活動が期待されている。(日本防災士機構認定)


※防災入門 セーフティマネジメント教育研究センターで開発した学生向け教育プログラムの第一弾として、2016年秋学期に人間科学部経営学科に新開講した科目。日本防災士機構の認定コースとなっており、15回の講座を受講後、防災士の資格取得をめざす。また、この講座は、全国の認定機関としては初めて。地元有力企業の協力により、学生の防災士試験受講料、教材費が免除されるという特典がある。


※防災監 災害や事故、重大な感染病対策など危機管理全般を一元的に統括する職務。大規模災害発生時等には、住民の生命や財産を守るための活動の指揮を行う。1996年全国で初めて兵庫県に設置され、現在では47都道府県すべてに防災監または危機管理監等が置かれている。

Profile 齋藤 富雄 さいとう・とみお

関西国際大学教授。元兵庫県副知事、兵庫県初代防災監。公益財団法人兵庫県国際交流協会理事長。関西大学法学部卒業。阪神・淡路大震災後の1996年に兵庫県の危機管理全般を統括する初代「防災監」に就任し、ロシアタンカー重油流出事故、台風第23号、高病原性鳥インフルエンザ、新型インフルエンザをはじめ多くの緊急事案を指揮した。2001~2009年に副知事を務める。2016年4月より現職。

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