学長からのメッセージ

学長 濱名 篤(はまな あつし)
関西国際大学教育学部教授。上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程修了。博士(社会学)。関西国際大学副学長を経て現職に。
他に、中央教育審議会専門員(大学分科会)、独立行政法人大学入試センター運営審議会委員、大学コンソーシアムひょうご神戸副理事長など。主な研究テーマは、「ユニバーサル高等教育の日本的展開」「初年次教育と学習支援」など。
2010年度入学式 学長式辞
新入生の皆さま、ご入学おめでとうございます。そして保護者の皆さま、本日の晴れの日を迎えられたことを心よりお喜び申し上げます。年度当初のご多用の所をご臨席いただいた三木市の松本明紀教育長をはじめ、ご来賓の皆さま、大学を代表いたしまして、日頃のご支援ご鞭撻に対し御礼申し上げます。本日、新入生として大学院7名、学部445名、編入学・転入学14名、計466名を迎え、三木と尼崎の中間にある神戸で入学式を挙行することになりました。
皆さんが今日から学ぶことになる関西国際大学は、多様性を尊重し、自らの体験や経験と専門知識の双方から学び、両者を総合的に活用できるようになっていただくことを重視する個性的な大学です。大学生にとっての最大の使命は、学習することを通して自らが成長することです。従って、本学ではしっかりと学習していただくつもりですし、学習しなければ卒業することもできないということを、しっかりと肝に銘じておいていただきたいと思います。
しかし、大学での学びは皆さまのこれまでの学びとはいささか違ったものになってくると思います。皆さんの学校教育法上での呼び名が【生徒:生き従う】から【学生:学び自ら生きる】へと変わることにもそのことが表れています。
本日の式には、新入生以外にも中国、韓国、タイ、フィリピン、台湾からの交換留学生17名も出席していますし、新入生の中には10名の留学生が含まれています。今年は、本学には、中国、韓国,ベトナム、フィリピン、ネパール、台湾など、66の国・地域から122名、全学生の約7%の留学生が学ぶことになります。また、社会でこれまで活躍してこられたシニア世代の方1名も編入学してこられました。市民として、生活者としての経験は本学に新たな刺激を与えてくれるものと期待しています。これ以外にも、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地から本学に集まって来た君たちを迎えることができました。こうした多様な文化的、社会的背景の人々が集うという環境は、大学にとって大きな財産であり、皆さんにとっても大学が貴重な発見と経験の機会となるでしょう。本学の学歌の歌詞には、こうした多様性を認め、相手を尊重し、「心の境界線が消えて無くなる」というフレーズを繰り返し使っています。素敵な学歌だと思いませんか?1日も早く歌えるようになってください。
本学は、朝日新聞社が出版する「大学ランキング2010」で、全国の大学学長アンケートに基づく「教育力のある大学」ランキングで7位という評価を得ていました。【今月刊行される2011年版でも10位という評価になるようです】。全国で750校の国公私立大学の中で、何故本学は評価してもらえるのか。それは、文部科学省が選定する大学教育のグッドプラクティス、いわゆる各種のGP事業に7度採択されて、「教育力」を育てる多くのプログラムを他の大学に先駆けて作り出してきたからだといわれています。
しかしながら、去る3月17日に本学学生の1人が、大麻不法所持の容疑で逮捕起訴されましたことは、誠に残念な事態であり、ご出席の皆さまにもご迷惑やご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。大学としての学生指導には万全を期してきたつもりでございましたが、1人でもこうした学生が出ましたことは、我々の努力に改善の余地があることを痛感させました。今後、皆さまにこうしたご心配をおかけしないよう、教職員一丸となって綱紀粛正をはかりたいと考えております。
話を元に戻させていただきます。本当の教育力とは、ここにいる新入生の君たちが、4年後あるいは2年後に、本学での学びや経験を通して「何ができるようになるか」という成長の成果に表れてくるはずです。
偏差値、就職率、国家試験や採用試験の合格率、これらの数字も大切ですが、それ以上に大切なのは、君たち自身が自分の成長を証明し、大卒者に相応しい人間力と知的能力を身につけたという実感を持てるようになることです。こうした成長を遂げることが、厳しい就職環境の中でも通用する「就業力」につながり、自らのライフプランと適性に相応しい、他でもないあなた方自身のキャリアをつくりあげていくのです。
20世紀後半のアメリカを代表する教育家の1人で、ニューヨーク州立大総長であったアーネスト・ボイヤーは、「学士課程教育における職業準備は、単なる職のため以上のことを意味する。最良の場合には、そうした教育は学生を技術的に向上させるだけでなく、学生にその仕事の人間的、社会的意味を発見させる」と指摘しています。つまり、就職に直結する知識・技術を身につけることや、試験に合格することが目的ではなく、それぞれの職業が持つ価値や使命を発見し、自らの生き方にとってその職業が持つ意味や意義が必要なものであることを確信できることの重要性を指摘しているのだと思います。
4年間の大学生活、実際には残念ながら就職活動までは3年しかないという現状ですが、入学してから、皆さん自身が一歩一歩着実に、自らの生き方を発見し、自分の強みや持ち味をしっかり確認し、その上で社会との繋がりや関わりを実感しながら、社会で必要とされる力を実感できるような学びの仕組みを、本学では準備しています。
仕組みの一つは、KUIS学習ベンチマークです。全学共通で、どの学部・学科で学んでも、どのような職業や職場であっても、大学を卒業した者に共通して身につけていることを期待される能力であり、スキルであり、態度特性です。皆さんは、大学に入学するまではどの大学のどの学科で「何を学ぶか」を第1に考えていたでしょうが、これからは、卒業するまでに「何ができるようになるか」を考えていってください。本学では、「自律性」「社会的貢献性」そして「多様性を受け入れる国際性」の3つを教育目標にし、人に対する思いやりと人を受け入れ、社会に貢献できる国際人を育成したいと思っています。その為には、いまお話しした「自律性」「社会的貢献性」そして「多様性を受け入れる国際性」の3つに、「コミュニケーション能力」と「課題解決能力」の2つを加えた5つの能力や人間力を、卒業までに身につけてもらうことを最低到達目標として設定しています。これらの5つの力は、学部学科や就職先の職場や仕事の内容を問わず、大卒者として職業生活や社会生活を続ける原動力になるでしょう。
第2の仕組みは、Eポートフォリオです。目標を立てることはできても、それが本当に実現できるか、そのことに不安を覚えている人もいるかもしれません。本学では、そのためにEポートフォリオという、君たちの学びの計画と記録を4年間コンピュータ上で作り上げていくシステムがあります。このシステムは、アメリカ等の大学で用いられていますが、本学のベンチマークの達成の過程を記録するだけでなく、キャンパスライフの思い出や写真、レポートなど多様な観点から生き生きと再現するツールとなり、就職活動の際にも利用できると思います
皆さんに心がけてほしいのは、受け身的に大学生活を送るのではなく、"Active"、すなわち能動的に考え、行動し、自らの行動を振り返り、次なる行動につなげていくという習慣づけです。自分で問題を発見し、既存の知識や情報を使って考え、そして問題の答えを導き出す。大学での学習は、皆さんの能動的な疑問からスタートします。問題を解決する前に、問題を自ら発見できる力がなければなりません。問題を発見して、それを他の人々と協力しながら解決に導いていく。その際に必要とされるのは,先ほど述べた汎用的な力と、専門的知識の両方であり、その両方を能動的に総合化し、使いこなしていくことが必要です。
本学には豊富な学習機会とチャンスがあります。これを自分のキャンパスライフ、そして人生に活かすことができるかは、君たちの考え方、学生生活の送り方次第です。4年間の間、是非とも、学生らしい,学生時代にしかできない体験・経験をしてください。ハラハラ、どきどき、なるほど、エー、といった“驚き”、“感動”、“気づき”といったことが、皆さんの成長の第1ステップであり、こうした体験・実感から問題は発見されるのです。問題発見のない、問題解決はあり得ないといっていいでしょう。
学びとつながる体験・経験、こうした経験こそが大学生活ならではのものなのです。その最たるものが、海外に行くということでしょう。自らの常識が世界の常識ではないことに気づき、自らの偏見や思いこみに気づくきっかけとなるのです。グローバル化という大きな社会的変化が叫ばれる中で、若者たちが海外に行きたがらない、海外で働きたがらないことが問題になっています。
経済産業省の最近の調査によると、新入社員で「どこの国いっても働きたい」と答える者は2割を切っているといいます。また、働いていい外国といえば、アメリカが63%、イギリス36%、ドイツ33%など欧米諸国が相変わらず上位を独占しています。ところが同じく経済産業省の企業調査の結果をみると、企業が考えるこれからの重点国は、アメリカが7%、EUも5%にすぎず、中国が40%、ASEANが23%とアジア諸国が3分の2に達しています。若者の常識や思いこみと、現実の社会の在り方にはすでに大きな乖離があるということです。
本学には、世界9カ国1地域に提携大学があり、社会に出てから、あるいは旅行会社では実現できない海外での体験学習の機会が豊富に用意されています。
先入観を捨て、新たな気づきを学習につなげるには、皆さん自身が自発的で自律的な活動に参加することが不可欠です。第1に,留学、インターンシップ、サービスラーニング、フィールドスタディといった、海外に行って経験学習する。第2に,サービスラーニングや地域社会での活動といった,他人や社会に役立つ継続的な活動に参画する、第3に、クラブ活動、学生メンター、学生会役員などの課外活動この3つのいずれか1つ以上に必ず参加してください。
この4年間あるいは2年間が、皆さんにとって豊かで実り多い経験の時となり、自らの成長と成功という穂が実ることを、心から願い、私の式辞とします。 (2010年4月2日)
メッセージ一覧
- 2009年3月14日
- 2009年度 学位記授与式 式辞2
- 2009年3月14日
- 2009年度 学位記授与式 式辞1
- 2010年1月5日
- 2010年 年頭挨拶
- 2009年9月30日
- 2009年度秋 入学式 式辞
- 2009年9月16日
- 2009年度秋 学位記授与式 式辞
- 2009年4月2日
- 2009年度 入学式 式辞2
- 2009年4月2日
- 2009年度 入学式 式辞1
- 2009年3月14日
- 2008年度 学位記授与式 式辞2
- 2009年3月14日
- 2008年度 学位記授与式 式辞1
- 2009年1月5日
- 2009年 年頭挨拶
- 2008年10月1日
- 2008年度秋 入学式 式辞
- 2008年9月11日
- 2008年度秋 学位記授与式 式辞
- 2008年6月1日
- 学びと成長につながる体験・経験を!
- 2008年4月2日
- 2008年度 入学式 式辞2
- 2008年4月2日
- 2008年度 入学式 式辞1
- 2008年3月15日
- 2007年度 学位記授与式 式辞
- 2008年1月9日
- 2008年度 年頭挨拶
- 2007年10月10日
- 2007年度 秋入学式 式辞

