関西国際大学 大学間連携共同教育推進事業

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平成24~28年度最終報告書

まえがき

関西国際大学 学長  濱名 篤

平成24年に、関西国際大学、淑徳大学、北陸学院大学、くらしき作陽大学の4大学が連携し、スタートさせた大学間連携共同教育推進事業「主体的な学びのための教学マネジメントシステムの構築」が5年間の活動を終え、一区切りを迎えた。
複雑な現代社会においては、主体的に考え行動できる力を持ち、予測困難な時代に対応できる人材の育成が求められている。そして、そのような社会からの要請に応えるには、大学の教育方法も変わらなければならない。 つまり、従来の講義型授業で専門的知識を伝達する教育から、学生が能動的にお互いに議論や提案ができる教育へと転換していかなければならないのである。
本取組では、目的を実現するための具体的な柱に次の3つを掲げた。①教学マネジメントシステムの構築、②ハイ・インパクト・プラクティス(HIP)の充実、③学修成果の評価方法の開発である。 まず、①教学マネジメントシステムの構築の実現のためには、各大学においてディプロマポリシーおよびカリキュラムポリシーを見直し、アセスメントポリシーを整備し、4大学間でFD 研修会の公開等も行ってきた。 特に、活動2年目の平成25年に各連携大学の教員が代表校へ出向していたことは、本取組における大きな成果であろう。代表校に身を置き、実際に教学マネジメントの運営に参画することが、本務校における事業推進につながるのである。 いわば、イノベーターの育成であった。事実、3年目からの活動では、出向者が強力な推進者となり、各大学における取組を進めていった。
また、②ハイ・インパクト・プラクティス(HIP)を充実させるためには、アクティブラーニングを活用した授業運営や、インパクトのある教室外体験学習プログラムの開発が必須であった。 そこで、教員のためには授業時間外学修を実質化した授業をデザインするため、協同学習に関する勉 強会等の共同実施も行った。また、学生の気づきを刺激するためには、成果発表会を遠隔会議システムで同時開催することも行ってきた。
さらに、③学修成果の評価方法の開発としては、ルーブリックの開発作業を共同で行い、シンポジウム等を通して、その開発や活用方法について広めてきた。 そして、学生支援型IRの活用については分科会で十分に議論し、取組の最終年度には一般社団法人学修評価・教育開発協議会の設立 にまで発展させることができた。
末筆となったが、本取組におけるステークホルダーの大学教育学会、独立行政法人大学入試センター、全国高等教育研究所等協議会の方々には、様々なご助言、ご協力を賜った。心よりお礼を申し上げたい。
本取組の知見がフィードバックされることにより、さらに日本の高等教育の世界が変化していくことを期待している。


平成24〜26年度事業報告書

はじめに

関西国際大学 学長  濱名 篤

大学間連携共同教育推進事業が始まって2年半が経過した。本取組採択の選考過程において何故この4大学が連携するのかということについて質問を受けたし、この顔ぶれに驚かれる方は少なくない。地域的にも、兵庫、千葉、石川、岡山と散らばり、設置主体の学校法人の間に系列や宗派的な繋がりも特にない。日常的な付き合いも深いとはいえない関係であった。共通点は、教員養成系の学科を持っていることと、知名度の高い大規模有名大学とはいえないという点くらいである。実際には、筆者自身がFD等で招聘され、関西国際大学(以下では「本学」という)の教育改革に深い関心を寄せていただいていた関係で淑徳大学と北陸学院大学の2大学を、また私自身にとって高等教育研究の大先輩であり日本高等教育学会会長も歴任された有本章くらしき作陽大学学長(当時)より以前から大学間連携共同教育推進事業に本学が応募するときには誘ってほしいという要請を受けていたことから同大学をお誘いして、本事業の計画を進めることになった。有名大規模大学にはできない、一人ひとりの学生の変化と成長に焦点を当てた大学教育改革のために連携事業を進めるという点での繋がりを本取組の準備から始めたといっていい。
本取組のキーワードは、①「アクティブラーニングの組織的導入」、②ルーブリック等を活用した「学修成果の可視化」、そして③「学生支援型IRの構築」の3つである。カリキュラムポリシーや教育方法に関わる①、アセスメントポリシーに関わる②、教学マネジメントの基盤を支える③と、それぞれが中教審の学士課程答申(2008年)や質的転換答申(2012年)のコアとなる内容であり、容易に組織的に成果を上げるのが難しいとみられている課題に果敢に取り組もうというのが決して知名度の高くない連携グループであるだけに、面接審査に呼び出されるほど実現性に疑問を抱かれた側面があったようである。
本取組の特色は前述のようにこれまでの繋がりが強くなかった連携校が難課題に取り組むために、各連携校から専任教員1名が1年間代表校である本学に出向して、内側から本学の教育改革や課題を体験しつつ、連携事業を進めるための諸施策の企画・開発にあたるという点にあった。慣れない他学の飯を食べ、本務校に1年間の穴を開けてまで、本取組の推進に尽力された富岡和久、芹澤高斉、田崎慎治の3人の先生方には敬意を表したい。彼らの帰学後の活躍が本取組の後半を左右するものになっていったといえよう。
本取組の成否は、申請書に盛り込んだ指標の達成や各大学の教育改革が進むだけでは測れない。①のアクティブラーニングや②のルーブリック等を活用したアセスメントの改善・強化が多くの大学で普及していくことに加え、本取組で参考にしたアメリカの中小規模リベラルアーツカレッジ有志大学が作っているIRコンソーシアムであるHEDS Consortium(Higher Education Data Sharing Consortium)のように、加盟大学内で信頼関係に基づくデータの共有を学生のパネルデータ(学生個人の時系列変化を見ることができる)レベルで行い、学生支援はもとより、各大学が自らの強みや特徴を戦略的にも確認できる、信頼関係に基づく大学間連携コンソーシアムを確立し、一定数の大学が参加できるように展開することが1つの中期目標になっていく。今後、連携校の協力・協働の中で発展させていきたい。


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