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    【学長室】2015年度 学位記授与式 学長式辞


     卒業生の皆さんご卒業おめでとうございます。またご臨席いただきました来賓の皆さま、お忙しい中、卒業生の門出に立ち会っていただきましたことに心より御礼申し上げます。保護者の皆様方におかれましては、4年間本学の教育活動にご支援いただきましたこと、そして、本日の卒業生の旅立ちを一緒にお祝いいただきますことに心より感謝申し上げます。本日、8名の修士号取得者、留学生14名、シニア学生3名を含む全国36都道府県を出身地とする学士号取得者336名へ学位を授与できましたことは、私どもにとりまして大きな喜びです。


     さて、卒業生の皆さんにとってのこの4年間を少し振り返ってみたいと思います。その中には、東京オリンピック開催の決定や富士山の世界文化遺産登録など、明るいニュースも沢山ありました。
     2012年には山中伸弥京都大学教授がiPS細胞の研究で「ノーベル生理学・医学賞」を受賞され、それを皮切りに、皆さんが在学されていたこの4年間で、日本から6人のノーベル賞受賞者が輩出されました。 このように世界から日本が注目されるような出来事が沢山ありました。また、景気も底を打って、皆さんの就職状況も明るかったと思われますし、本日も学長特別賞を差し上げた卒業生は、一際大きな活躍をされたという風にも思います。フルブライトに採択されたことは快挙でありましたし、多くの成果を皆さんの学年の学生諸君があげてくれたことは明るい話題だったかと思います。


     しかし、悪いことや暗いニュースが無かったわけではありません。私達の生活が「安全・安心」とは必ずしもいえないような事件や出来事が沢山ありました。本日、式の冒頭で皆さんと共に黙祷いたしましたが、5年前の東日本大震災、そしてそれに伴う福島原発の事故、それを超える悲劇こそ無かったものの、自然災害や、テロ、戦争、こういう忌まわしい出来事が皆さんの在籍しているこの4年間に沢山起こった事も忘れてはなりません。三陸沖の地震、御嶽山、箱根山、桜島、阿蘇山などの火山活動、ネパールでの大地震、豪雨による広島の土砂災害など、大きな自然災害がきっかけとなった惨事も多くありました
     さらに、範囲を広げて見ていくと、イスラム国(IS)による日本人拘束殺害事件、パリの同時多発テロも記憶に新しいところです。さらにはこの瞬間にもシリアの内戦は続いています。そして、それに伴いヨーロッパに大量の難民が流出し、その逃れていく最中に大勢の子ども達の命が失われていることも事実です。こうしたことは卒業生の皆さんにはリフレクション・デイを通じて話をした事がありますが、このような大変悲しい出来事もこの4年間沢山ありました。


     我々にとって、生きていること、あるいは家族と共に平和に暮らしていること、仕事が出来ること、それらは当たり前のことという風に感じますが、こうした当たり前の幸せが一瞬にして奪われてしまうことが頻繁に発生しているのが現在の世界の情勢であります。
     東日本大震災から5年が経ちましたが、2016年3月現在において、死者・行方不明者はあわせて18,455人となっています。さらに被害額を金額に換算すると少なく見積もって直接被害額10兆円、多く見積もると25兆円と言われています。復旧、復興も、必ずしも順調に進んでいるわけではありません。生まれ育った街に戻れない方など、避難者は今なお17万人以上となっており、一家離散やまだ仕事に復帰できないといった厳しい生活を続けられている方が大勢いらっしゃいます。福島原発の問題は今日でもなお、どの程度経ったら解決できるか、元に戻すことが出来るか、回復できるかという見通しは立っていません。40年経っても…つまり皆さんが今のお父さんやお母さんを超える年齢に達した時でさえも、回復の道筋すら出来ていないという状態です。私達にとって安全や安心が明日も約束されているものではないということ、これは一日一日を大切に過ごしていかなければならないということではないでしょうか。 


     現代は将来予測が大変難しい時代です。私が出席している文部科学省の中央教育審議会において“将来予測が困難な時代”という文言が何度も繰り返し使われています。将来予測が難しいのは皆さまにとっての職業生活と同じであります。
    株式会社野村総合研究所が公表した結果によると、現在日本にある職業の49%は10年、もしくは20年先にはロボットやITに取って代わられる確率が高いという予測が出されています。そういう意味では皆さんが本日卒業され、大学を出られるということは、学びの修了とは必ずしも言えません。皆さんはこれからも学び続けていかなければならないという状況が未来に待ち構えています。


     皆さんは本学在学中にグローバルスタディを全員選択必修としていずれかの地に赴かれたわけです。全ての学生は海外留学に参加して、多様性を実感し、コミュニケーションの難しさ、あるいは自分達が成し遂げたことを通じての成長を実感したことだと思います。皆さんの世代の人達がグローバルな感覚なしに生きていくことは不可能だと言われています。
     そのために本学は、他の大学に先駆けてアジア諸国を中心に13の国と地域の47大学と協定関係を結び、皆さんを海外に送り出し、自分達の常識や文化と異なる経験を通じて学びを深めて欲しいと願ってきました。かつて、このグローバルスタディを始めた最初のきっかけは、教育学部のある先生から言われた一言でしたが、私自身が大学1年生の終わりにフィリピンで1カ月間過ごした経験がその後の自分の学び、歩みに大きな影響を持っていることも大きな理由となっています。


     私がお世話になった今は亡き社会学者の園田英弘さんは、日本と海外を比較する時のモノの見方について、欧米先進国を基準に考えて、何故日本には欧米にある“○○”が存在しないのか、というモノの見方、つまり、あるべきものが欠如しているという「欠如理論」ですが、こうした見方で世界をみることに対する警鐘をならされました。世界にあるものが日本に無いことは、日本が後進的であるから、日本の後進性の現れであるから、と、こういう見方です。しかし、日本にあるものを海外に輸出する、日本にあるものが、他の国にもきっとあるはずだという見方、つまり日本にあるものは海外に普及させることが出来る―文化や制度、あるいは社会組織というものが適用できるという発想、これを園田氏は「逆欠如理論」という風に名づけました。彼は日本の大学教授ですが、今から26年前、オックスフォードやケンブリッジやハーバードというような大学がなぜ日本にないのかという仮説は立てられますけれども、なぜ東京大学のような大学がアメリカやイギリスに無いのか、こういうモノの見方も出来るということを示しました。
     しかし、我々がこうしたモノの見方をしていくためには、まず日本のことをしっかりと理解しているということが前提になります。近年、協定大学を増やしていくプロセスの中で、東南アジアの提携大学関係者と話をしますと、自然災害を日本社会が人々の協力によって乗り越えてきた経験に対する「関心と敬意」というものを実感することが非常に多いです。こうした関心に対して、私達、そして皆さんが答えていくことが必要な時代になってきていると思います。一つのモノの見方だけ、それだけで自分の考え方、自分の決定を下してしまうのではなく、複眼的、論理的に物事を考えるということが重要になるということを忘れてはならないと思います。答えは一つとは限らない。自分の苦手や常識だけを当たり前のものとして考えてしまうことは、皆さんにKUIS学修ベンチマークで身に付けることを求めている「多様性理解」とは異なったモノの見方です。現在多くの外国人が我が国に訪れるようになっています。自分達の常識では理解し難い行動をとっていることもあります。声が大きい、マナーが悪い、そうした行動を見て眉を顰めたり、自分達とは外見や特徴の異なる人達に対してもそういう感想をもちがちです。お年寄りや子ども達に対してもそうです。自分達と異なる人を見て、「関係ない」「他人事だ」と突き放して見る人達も少なくありません。日本ではこれまで比較的、多様性というものを意識しなくても済んできたかもしれません。そして、多様性が小さい社会であったことは、自分達と異なる人達に対する我々の目線が厳しく冷たいという原因かもしれません。


     皆さんはあと僅かで、「学生」という地位から「市民」という立場に変わることになります。大学を卒業した21世紀型市民―これは皆さんにこれから期待されるのは、知識を覚えているだけでは不十分だということを意味します。これまで皆さんが学んできた知識と、自らの経験を総合化して、これを使いこなしていくことが求められます。つまり、今まで皆さんが蓄積してきたものを総合的に使いこなすことが求められるということです。そのために、自分自身の頭で、何が問題なのか、なぜ問題なのか、その上でどう対処していけばいいのかということを、これまでの蓄積を活かして考え、そして実行することが求められます。その際に先程申し上げた複眼的な視点、欠如理論と逆欠如理論のように異なる物の見方を組み合わせて考えてみるようにしてほしいということをお願いしたいと思います。


     皆さん自身も、本学での学びの中で大きく成長されてきたということは、確かな結果として残っています。皆さんがこの4年間身に付け、出来るようになったことを、今日この日に、もう一度振り返って欲しいと思います。
     皆さんを対象に3年生の秋に実施した適応調査ですが、そのアンケートの結果を見てみますと、「自分は人の役に立つ事が出来る」という問いに対し、「多い」「やや多い」と回答した人は77%でした。また「自分がこれまで学んできた知識や経験を総合的に活用する力」では、「大学に入ってから伸びた」と答えた人が91%でした。皆さんが学んだことを活用して、人の役に立てることが期待できる数字ということで、我々としてはワクワクした思いで皆さんのこれからを見守りたいと思っています。


     市民という言葉は英語で「citizen」。これは社会を構成する責任ある存在であるということです。市民は「自律性」「公共性」「能動性」、つまり自分のことを自分で律して、そして社会のことを考え、具体的に自分が能動的に働きかけていく、この三つの要素を身に付けていくことが期待されます。個人として自主独立する機会を持ち、自立的に活動できる自律性、そして自ら社会における主権者であるという事を自覚して社会的権利と義務を履行していくと共に、社会のことを常に考え、受動的ではなく自らが能動的に社会に向けて働きかけ、参加していく能動性、この3つを心に留めておいてほしいと思います。
     皆さん、もう一度思い出してください。本学がベンチマークの中で語ってきた「自律性」「社会的貢献性」「多様性」、この三つについてです。我々がベンチマークとして4年間皆さんにチェックしてほしいと言ってきたことは、皆さんがこれから市民として社会の中で発揮していくべき力をこの4年間で自分の中に取り込んでもらいたい、という思いで働きかけてきたということなのです。


     本日、式の終わりに歌う本学の学歌に、先程述べた期待が込められています。「心の地図から境界線が消えて無くなる」というフレーズが繰り返し出てきます。この歌詞の中には、多様な人々を受け入れることの重要性が込められています。あるいは「夢に形を与えるために」というフレーズには、皆さんの中にある自律性という言葉を思い出してもらうための歌詞だと思います。「愛があるから痛みがわかる」「作り上げよう」「ひたすらに歩いていこう」こうした歌詞の中に込められているのは、まさに“能動的に自分自身の足で”というメッセージです。他の人、または社会に対しての関わりというものをしっかりと持ち、人と人との繋がりに対する思いを感じさせてくれる歌詞ではないでしょうか。今日最後にするのではなく、この歌詞をどこかで見る度に、自らが学んだことをもう一度思い出していただけたらと思います。そしてこうした言葉を噛みしめて学歌を歌っていただけたらと思っています。


     本日、皆さんはアカデミックガウン着ています。今着ておられるアカデミックガウンは真理の前での平等を象徴するもので、貧富の差や属性の違いと関係なく、同じ学位を授けられるものが同じ色のガウンを着るという意味があり、この日にしか着ることができないものです。共に学んだ友人たちと、等しく同じ立場で本学を巣立っていってほしいという願いを込めています。この帽子のタッセルを右から左に移すことによって、「大学生」から「卒業生」になったというシンボリックな意味があります。


     最後に。これから社会に旅立っていく皆さんにとって、順風満帆な人生ばかりが待っているわけではないでしょう。様々な困難に直面することもきっと出てくると思います。将来予測が困難な時代の中で、懸命な世界市民として皆さん自身がこれまで学んできたこと、経験してきたこと、それらを土台にしてさらに成長していかれることを期待しています。社会を支え、自ら学び、自ら社会に参加する21世紀型の世界市民として、皆さん自身がこれからの人生を能動的に歩み、そして自身の人生を切り拓いていかれることを心から祈念して、お祝いの言葉とさせていただきたいと思います。
    ご卒業本当におめでとう。


    2016年3月14日
    学長 濱名 篤

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