【国際コミュニケーション学部】〈文化人類学コラム〉万国共通ではない「定食」の概念
【2020年10月28日】
海外のレストランに行って気づく面白いことがあります。料理の味付けが日本と違って少し甘すぎたり(フィリピン)、あるいは、辛すぎたり(中国)することだけではありません。アメリカのように、ステーキのサイズが日本よりもはるかに大きい、ということだけでもありません。「定食」という概念が意外と海外にはない、ということです。
例えば、イタリアのベネチアであるレストランに行った時、料理を注文しようとしたら、メニューさえありませんでした。そこで、ウェイトレスの人に、メニューはないのか尋ねると、「私がメニューよ、何でも欲しい料理があったら言ってください」と言われました。そこで、自分が食べられる物、食べたい物の希望を伝えると、私のために特別にアレンジしたリゾットが出てきました(写真)。周りの客をみると、みんな同じように注文していました。
海外では、ベジタリアンなど食事制限のある人は、たくさんいます。また、自分が食べたい物の希望をウェイターやウェイトレスに率直に伝える人もたくさんいます。だから、ウェイトレスとこのように交渉して、自分の希望に近い料理にしてもらうことはよくあります。
そうしたことが日常茶飯事の海外の人が、日本のレストランの「定食」をみたら、「何で最初から中身が決まっているのか」と言ってびっくりされます。例えば、私のアメリカ人の知り合いが日本に来た時、ハンバーグ定食とトンカツ定食をみて、「ハンバーグ定食のポテトはいらないから、トンカツに変えて欲しい」とウェイターに希望を述べていました。そうした交渉に慣れない日本人ウェイターは、とても困った様子でした。海外の人の中には、日本の「定食」という概念が、柔軟性に少し欠けている、と思われることも少なくないようです。
本学で学べる文化人類学では、こうした細かい文化の違いについても深く学びます。ぜひ一度授業をのぞきに来てください。
イタリアのレストランで特別に作ってもらったリゾットを食べているところ
国際コミュニケーション学部 准教授
清水 拓野