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    【人間科学部】中山誠教授が、読売新聞で「安楽死(嘱託殺人)事件」について解説

    - 医師が、患者を安楽死させると、逮捕されるのか? -

     

    【2020年8月19日】

    「医師が、回復見込みのない患者を安楽死させると、殺人罪に問われるか?」


    正解は、オランダやベルギーでは”no”であり、日本では”yes”である。ただし、わが国でも終末期の患者が延命治療を望まない場合は『消極的安楽死』が認められ、訴追を免れることもあるから複雑だ。

    昨年11月末に京都市で筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者が殺害された事件で、容疑者の医師2名が8月13日に嘱託殺人の罪で起訴された、その犯行に至るまでのSNSの記録が残っていることから、さまざまな憶測を呼んでいる。

     

    被告は医学部を卒業時から、老人医療に積極的に取り組んでいた。末期がんの患者から「先生はくすりみたいなもんじゃ。来ると元気でる。」といわれると、自分も患者の役に立っていると感じて素直に喜び、命を全うした人を家族が「看取る」時には病室で一緒に涙する体験もしている。そして、回復の見込みのない終末期医療について、高額な延命治療費の負担、現場では医者と看護師の疲弊、家族から見離された老人は「社会的入院」、あるいは「水栽培」といった過激なキーワードによって数々の問題点を浮き彫りにしている。

    一方、優生思想を掲げるような発言も時にはみられる。そして、電子書籍で「扱いに困った高齢者を「枯らす」技術~誰も教えなかった、病院での枯らし方」「お看取りマンガ~「延命処置どうしますか?」と医者に聞かれる前に読む本」を出しており、ネット上で安楽死させる具体的方法を書き残している。


    今回の被害者と被告の出会いは、2018年末で、2019年の1月には「訴追されないなら」、「お願いします」といった、安楽死に関するやりとりが、ツイッター上で展開されている。しかしながら、殺人が実行されるまでに費やされた時間は、実に約11か月に及ぶ。

    なぜ、それほどの時間がかかったのか。被告は、今回とは別の機会に死体検案書をめぐって警察の取り調べを受けた経験があるようだ。ある意味では警察慣れしており、殺人事件捜査への猜疑心が強く、用心深い。安楽死を実行して、逮捕されると、医師免許も失うばかりか、犯罪者になることを、日ごろから最も恐れてもいたといえよう。そして、安楽死のために患者がいくら払うかという調査を自ら、SNS上で実施し、最も多い答えが100万円とわかると、「割に合わない」と落胆している。

    また、犯行当日、被害者方を訪れた際には偽名を名乗っているが、防犯カメラに映る画像には無警戒であった。犯行は一人でもできたと思われるが、後輩を共犯者に仕立て、その口座を振り込み先に指定している。容疑者は被害者の主治医ではなく、背乗りした他人名義で偽の死亡診断書を作成することもできない。何よりも、犯行をにおわせるSNSの記録が処分されていない。要するに、証拠隠滅の動きは皆無で、警察が真犯人にたどり着けるような、明白な手がかりをいくつも残している。

     

    それではなぜ、そんな不用意なやり方で、殺人を実行したのか。


    まず、被告が選んだバルビツール系の薬剤というのが大いに疑問である。この薬品は安楽死の常とう手段として使われるもので、訪問後に急変した患者の体内から検出されれば、殺人の決定的な物証となる。すなわち、すぐに事件性を疑われる手段の選択はあまりにも「稚拙」としか言いようがない。換言すれば、彼が最も尊敬し、信奉する、安楽死の執行人にして、完全犯罪者の「ドクターキリコ」には、ほど遠い。そして、それ故に、被告人にとって、今回が積極的安楽死の最初の実行であり、これ以外の余罪はなく、犯罪性は進んでいないことが推定される。一方で、殺害前に被害者から受けとった100万円程度の金では割に合わず、金銭的報酬が犯行目的でないことは明らかである。

    そこで、動機として考えられることは、医師免許がはく奪されたとしても、安楽死の合法化に向け、一石を投じるために、逮捕されることは読み込み済みで、すぐにわかるような「殺人」事件を敢えて演じたのかもしれない。

    もう一つ考えられることは、延命装置を望まない、被害者の「リビングウィル」を最大限に尊重したかったのではないか、ということである。そして、それを実行できるのは医師としての自分だけと思い込み、存在証明と使命感のためではなかったかと考えられる。少しでも早く被害者の尊厳死に向けた意思を全うさせたいという思いから、殺害手段に関しては準備不足のまま、あえて「不完全犯罪」を時間切れで強行したのか。

     

    医師として安楽死させるか、させるべきでないのかという2つの選択肢の中で逡巡している間に、出会いから実行までの長すぎる、あるいは短すぎた11か月が過ぎ去ったのではないだろうか。

    これらのことを確かめるには、公判廷での被告の証言を待つほかはない。



    ※読売新聞 2020年8月16日 朝刊に要約された内容が掲載されました。


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    【 人間科学部 人間心理学科 中山 誠 教授 】

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