2017年6月28日掲載
もっと世界で通じる英語へ 「発音」を核とした新しい英語教育
教育学部英語コミュニケーション学科
教授 有本 純


学べない、話せない、教えられない――。そんな英語教育の悪循環を断ち切るべく、英語発音指導法の開発と普及に力を尽くしているのが有本純教授だ。
有本教授の専門は、発音を中心とした英語音声学や英語科教育法。英語教員をめざす学生も多い英語コミュニケーション学科で実践的な発音指導するとともに、現役の英語教員のための研修プログラムづくりも手がけている。いわば「英語の先生の先生」なのだ。
―独自メソッドの発音指導で「通じる英語」を身につける
では、そんな有本流の英語発音指導とはどのようなものなのか。英語教職課程の必修科目になっている「英語音声学」では、英語、日本語それぞれの音の特徴や発声方法の理解を促し、それに基づいて正しい発音のトレーニングを繰り返す。「英語発音指導法」は主に英語教員をめざす学生に向けたもので、生徒に発音をどう説明するか、間違った発音をしていたらどう修正するかなど、英語教育の現場で役立つノウハウを伝授する。いずれも、一人ひとりとじっくり向き合い、個別指導ができる少人数授業だ。
このほか、オールイングリッシュの授業で英語を使いこなすための知識と能力を伸ばす「英語学」、事例からコミュニケーションで使える文法の指導法を学ぶ「学校英文法」など、有本教授がこれまでの研究成果を生かして独自に開発した科目は、他の大学にはないユニークなものばかり。
これらすべてに通じる指導目標は「通じる英語」を話せるようになることだ。 「日本人が英語を話せば日本語のクセが出るのは当然です。ネイティブのような流暢な話し方をめざすのではなく、聞き取りやすく、誤解のない英語を話すための知識と技能を身につけてほしいと思っています」

たとえば、日本人が陥りがちな「間違った英語の話し方」にはこんな例がある。 「英語っぽく話そうとして、かえっておかしくなっている人は多いですね。たとえば、インターンシップをインターンスィップと発音するような例です。発音として明らかに間違っているのですが、こうなるには理由があります。日本語のサ行はsa、shi、su、se、soで、シだけにshが入っています。つまり、si(スィ)という音は日本語にない。そのためshiは日本語っぽい、siは英語っぽいと感じてしまい、英語を話すときに無意識にシをスィに置き換えてしまうのです。逆にRやLは日本語にない音ですが、これはすべて日本語のラ行で発音してしまう。いずれも通じません」
自信を持って「通じる英語」を話すには、日本語と英語の違いや、日本人が陥りやすい傾向を踏まえて学ぶことが大切なのだ。

―未来のフィールドを広げるための厳しいけれど充実した学び
ただし、指導は甘くない。「毎年4月の最初の授業で学生たちに『楽しい授業を目指すつもりは一切ありません』と宣言しています。飴とムチならムチが多い。飴ばかり与えて学生を虫歯にしたくありませんから。勉強に近道はないのです」
厳しいけれど濃密な学びがあり、確かな成長が実感できる。有本教授は英語教育の最前線で、本気で英語の力を伸ばしたい学生を待っている。
Profile 有本 純 ありもと・じゅん
関西学院大学文学部卒業、神戸市外国語大学大学院英語学専攻修士課程修了。英国リーズ大院留学後、熊本学園大学助教授などを経て、1999年に関西国際大学へ。英語音声学、英語教育を専門分野とし、『英語のイントネーション:メカニズムとその指導法』(2017年・開拓社)など著書多数。『ジーニアス英和大辞典』の発音担当、高校の英語教科書の編集など、教材作成分野でも活躍。