神戸から、世界へ──。
グローバルな学びの環境が、
さらに進化する。
今回、文科省の「大学の世界展開力強化事業」に、
関西国際大学のプロジェクトが初めて採択されました。
この事業は、文部科学省が大学のグローバル展開を後押しするという趣旨で平成23年度にスタートしたものです。
今回は10回目になりますが、これまで採択された大学を見ると、東京大・名古屋大・千葉大...と、のべ採択件数の8割以上を国公立大学が占めています。関西の私大では、立命館大・関西大・近畿大・関西学院大に採択実績がありますが、学生数4000人未満の小規模私立大学としては、本学が全国初の採択校になりました。とても嬉しく思っています。
ウェスタン・シドニー大学(オーストラリア)、Sydney School of Entrepreneurship(SSE)、デリー大学(インド)、キール大学(英国)、バンクーバー・アイランド大学(カナダ)の海外5大学、日本では関西国際大学と、神戸芸術工科大学、宮崎国際大学の3大学が連携して、国際共働カリキュラムを展開していく──。
とてもスケールの大きなプロジェクトですね。
プログラムの土台になるのは、ウェスタン・シドニー大学のVenture Makers(ベンチャー・メーカー=VM)という、起業家教育に特化したカリキュラムです。これに、参加大学がそれぞれの国のケーススタディなどを提供し、カリキュラムを充実させていく予定です。
カリキュラムづくりに関しては、ベンチャー支援組織Innovation Dojo Japan(IDJ)の協力も得ています。IDJは、ニュー・サウスウェールズ大学の学内組織Innovation Dojoの日本支部として2020年に発足した機関で、創設者のジョシュア・フラネリー氏は、実は私の長年の友人です。彼らとも活発に意見交換しながら、視野の広い多国籍プログラムになるよう、磨き上げているところです。
細かい調整はこれからですが、今年度中にカリキュラムをしっかりまとめ、来年の2〜3月には短期の学生交流と国際学生起業家会議(Venture Makers Global Conference)を実施します。そして、2023年4月からは、長期プログラムを含めて大学の正式なカリキュラムに組み込んでいく予定です。
単に海外の大学や機関と連携するだけでなく「グローバルな起業家マインドを育む」という明確なテーマを設定し、神戸市や関西経済同友会など国内の多様なステークホルダーとも連携。地域のベンチャー文化活性化をめざしているのが、本プロジェクトの最大の特色です。
プロジェクトのタイトルに
「産官学連携ベンチャー・エコ・システムの創成」が掲げられています。
「ベンチャー・エコ・システム」とは、ベンチャー企業が行政機関、投資家、既存の企業など多様なステークホルダーと相互に連携しながら成長できる環境を意味しています。さまざまな生き物が豊かに共生する生態系(エコシステム)になぞらえた言葉です。
どれほど優れたアイデアや技術があっても、さまざまなステークホルダーとの豊かなつながりがないとビジネスとして広がりません。本プロジェクトも、ベンチャー・エコ・システムの一部なのです。
本学の国際コミュニケーション学部がある神戸は、古くから国際都市として発展してきた街です。神戸市は、こうした土壌を生かして、世界から起業家や投資家が集まってくる「スタートアップ都市」を育てようとしています。また、関西経済同友会では、ベンチャー・フレンドリー宣言を採択し、既存企業とベンチャー企業の相互連携を模索しています。本プロジェクトは、この動きとも連携しているのです。
神戸と世界がぐっと近づくイメージです。
対面とオンラインを組み合わせることで留学のハードルが下がり、自由度が増しますね。
各参加大学とは協定を締結しますので、留学や、短期的な海外プログラムの参加もやりやすくなります。また、直接現地に行かなくても、オンラインを駆使すれば、神戸にいながらにして、海外大学の授業を受けたり、ディスカッションしながら、協働プロジェクトを推進することも可能です。
海外の企業や投資家、ベンチャーキャピタルとのつながりもできるので、海外の投資家に向けてビジネスアイデアを直接プレゼンするチャンスもあります。本事業を通じてインターンシップの機会も増やしていきます。学生にとって、通常の留学や海外研修とはレベルの違う学びの機会が多様に生まれると思います。
本学のキャンパスはもちろん、神戸市などが整備したインキュベーションスペース「アンカー神戸」も本プロジェクトの拠点として活用します。神戸とシドニーで隔年開催するカンファレンス「国際学生起業家会議(VMGC)」の会場としても使う予定です。
202207.25 大学からのお知らせ
▽濱名学長とジョシュア・フラネリ代表(イノベーション道場)が面談
2023年4月には、国際コミュニケーション学部の「英語コミュニケーション学科」が、より広く「グローバルコミュニケーション学科」に生まれ変わります。
英語を中心に、実践的な語学教育に力を入れるのはこれまでと変わりませんが、「多文化共生」や「アントレプレナーシップ」に関連する科目を充実させて、グローバルに活躍できる起業家マインドを持った人材を育てる学科へと進化します。
「起業家マインド」というと、「自分は就職するから関係ない」と思う人もいるかもしれませんが、これからは、会社員も公務員も、与えられた仕事をするだけでは「窓際族」まっしぐらです。新しいビジネスを構想したり、新しいことにチャレンジしたりするマインドは、あらゆるビジネスパーソンに必要なものです。
グローバル化が進む世界で、日本国内だけに閉じた活動をしていては成長が難しい。学生時代から、生の海外情報に触れ、議論し、ビジネスに参画できる機会を持つことは、将来の成功のために大きなアドバンテージになると思います。
またこのプログラムには、国際コミュニケーション学部の他に、社会学部、経営学部の学生も参加できます。また、これら3学部以外の学部からも、他学部履修として参加でるように配慮をしていく予定です。本事業で留学する学生には、事業予算からの助成金のほかに、各種の奨学金を受給できる制度がありますので、学生の経済負担は最小限になります。
導入科目として、2022年度から「グローバルアントレプレナー論」が開講されています。学生たちの手応えはいかがですか。
事業アイデアを持っている学生が多く、地方創生につながる面白いビジネスプランがいくつか生まれています。ベトナム、中国、モンゴルなどからの留学生も在籍しています。彼らは英語が堪能ですから、オールイングリッシュで授業を行うこともあります。
こんなことをいうと「ついていけそうにない」と思う人もいるかもしれませんが、本学では、大学に入学してから初めて英語を真剣に勉強した、という学生がほとんど。英語教育はとても充実していますから、高校まで英語が苦手だったという人も、臆せず仲間に加わってほしいと思います。
私自身、最初の就職は英語とは何の関係もない福祉系の仕事をしていましたが、28歳の時に一念発起して英語の猛勉強を開始し、ハーバード大学の教育大学院に入学した経験があります。とても大変でしたが、チャレンジしないと何も始まらないし、何歳でも、誰でも、チャレンジは可能です。そのための環境は、できるだけ用意したいと思っています。
学生だけでなく、大学全体に「起業家マインド」がインストールされそうですね。
ぜひそうしたいですね。これから必要な組織づくりや事務的な調整など、やるべきことの多さを考えると、プレッシャーを感じますが、これも組織の進化のためには必要です。ルーチンワークしかやらない組織は死んでしまいますから。
未来の学生に向けて、メッセージをお願いします。
これから始まる各国の学生との切磋琢磨や、ビジネスパーソンとのコミュニケーションを、ぜひ、楽しんでほしいと思います。海外旅行で外国人の友達を作るのも大事な経験ですが、ビジネスという視点で国際的なプロジェクトに参画する経験から得られる達成感は、比べものにならないほど大きいと思います。
新しいことをやってみたい、というチャレンジ精神あふれる人を待っています。