DX教育への取り組み

学生の成長を力強くサポートするために
「学びの仕組み」がDXで進化する

デジタル技術を活用して「学び」を大きく進化させる──。

20213月、関西国際大学のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進計画が、文部科学省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」に採択されました。

シリーズでこのプログラムの成果を披露していくので、楽しみにしておいてください。

(第二回)学びのDXで、学生の成長が加速

今回のDXでは、システムの刷新とともに、学生の能動的な学びを促進するツールとして360度動画カメラを多数導入しました。実際に活用している現場の教員の声をご紹介します。

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教育学部教育福祉学科こども学専攻
椋田善之准教授
【全方位映像で、実習の「振り返り」が充実】
実習科目の、実りある「事後学習」のために

360度動画カメラが導入されると聞いて、すぐ「使いたい!」と手を挙げました。実習科目の振り返りにぴったりだと考えたからです。

私は、主に幼稚園教諭や保育士をめざす学生たちが学ぶ「こども学専攻 教育・保育コース」で、「保育所・幼稚園教育実習事前事後指導」など、保育の実技や実習を含む科目を中心に担当しています。実習とひとくちにいっても、大学の教室内で保育現場を想定して行う「ロールプレイ」もあれば、実際の保育現場で子どもたちと実際に触れ合う「現場実習」もあります。いずれの場合も、「いままで学んだ知識を存分に発揮してほしい」「実習経験を次の成長に生かしてほしい」という思いを込めて指導していますが、課題もあります。

たとえばロールプレイの場合、学生たちは目の前に子どもたちがいないのに、ピアノを弾いたり、絵本を読んだりしなくてはいけません。どうしてもロールプレイに対して本気になれず、友達に見られているという照れもあって、モチベーションが上がりにくい。一方、実際に保育所等で実習するとモチベーションは上がるのですが、自分の動きがどうよかったか、何が足りないかを振り返るのが難しい。「本人の記憶」だけを頼りにすると、具体的な改善点が曖昧になってしまうのです。

学生同士の「相互評価」で学びが深まる

360度動画カメラは、こうした実習の振り返りにぴったりです。以前から動画は撮影していましたが、全方位映像だとインパクトが全然違う。映すだけで「おーっ」と盛り上がるので、ロールプレイにも自然と気持ちが入るようになりました。

それ以上に効果があったのが現場実習です。初めて使った日から学生たちは興味津津。大学に戻ってすぐパソコンで映像を見たのですが、学生たちの動きはもちろん、子どもたちの反応や表情まではっきり映っています。「ここ、子どもの反応めちゃくちゃいいね!」「この言葉がけはよかったね」といった学生同士の相互評価が自然に始まり、充実した事後学習ができました。

一人一人のパフォーマンスだけでなく、チームの動きが検証できるのも大きなメリットです。保育の仕事には、子どもたちを預かるという重い責任があり、安全のためにもチームプレーが重要です。全方位映像があれば、人員配置や連携の問題点が一目瞭然なので、どこを改善すべきかがすぐ分かります。この時は、特にいい動きをしていた学生が、みんなから「すごい!」「いいね!」と褒められていました。控えめな性格の学生はどうしても自分を過小評価しがちです。映像と仲間の評価で自分の長所を知り、自信をつけるいい機会になったと思います。逆に、根拠なく自信を持っている学生がいた場合も、その動きのまずさがばっちり映りますから言い訳できません。いずれにしても成長のきっかけになるのです。

私自身も気づきがありました。複数の教員で同じ動画を見ると、目をつけるポイントがそれぞれ違い、よりよい指導をするための議論が生まれました。まだ試験運用段階なのでデータの蓄積はこれからですが、今後はデータ分析を積極的に進めて、さらに学生の成長に役立てたいと考えています。

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高等教育研究開発センター
中嶌康二センター長
【学生の成長を力強くサポートするデジタルの力】
より「実践」に強い大学へ

DXで「学びのデザイン」を進化させる──。それが今回のDX計画の大きなテーマでした。私は、関西国際大学の高等教育研究開発センター長として、よりよい教育プログラム開発の研究と実施を行っています。今回のDXプロジェクトでも、授業デザインや指導・評価方法の改善という観点から計画づくりに参加しました。

本学での学びの大きな特色は「実践」です。保育士や看護師を養成する教育福祉学科や看護学科はもちろんですが、その他の学部・学科でも、社会貢献と学びを組み合わせたサービスラーニングや、企業や地域と連携したPBL(課題解決型学習)などの実践型・実習型の学びがとても充実しており、学生たちはそれぞれの分野で「将来に生きる力」を身につけ、大きく成長しています。ただし、「知識のインプット」が目標ならペーパーテストで達成度を測ることができますが、このような学修活動においては、「評価」することは簡単ではありません。「知識を使いこなす」ことを測る指標を定めるには、適切な授業デザインとテクノロジーの活用が有効です。

今回導入した「360度カメラ」は、そのためのツールのひとつです。現在は模擬授業、模擬保育、看護実習といった実習科目での活用が中心ですが、今後はあらゆる学科に広げていく予定です。大量の動画を蓄積・編集できる環境も整ったので、学生自身が学外活動の様子を映像で記録し、例えば、それをグループで相互レビューしてさらに学びを深めたり、教員から指導を受ける...といった使い方もできるようになります。

こうした環境を生かすべく、いま、全学科で授業デザインの見直しを進めています。できるだけ「知識を実践的に使いこなせるチャンス」を提供し、評価できる仕組みを整えるのが目的です。ソフトとハードの両面から「実践的な学び」を深めようとしているのです。

学生一人一人を見つめた、きめ細かい指導

学生の「学び」が進化すれば、教員の「指導」も進化しなくてはなりません。

本学には「評価と実践」という独自の必修科目があります。学生が自分の学びを半期ごとに振り返り(リフレクション)、「KUISs学修ベンチマーク」として明文化された学修目標について、各項目がどれだけ達成できているかどうかを自己評価し、さらなる学びにつなげていくものです。

このプロセスを繰り返すことで、①自分はどこに向かっているのか(ゴール)、②どこまで進んだのか(現在地)、③ゴール達成のために何をしなければいけないか(課題)、が明確になる成長のロードマップが描けるのです。4年間でしっかり成長するための優れた仕組みですし、自分の強みが明らかになるので、就職活動でも非常に役立ちます。

ただし、この仕組みのメリットを十分に生かすためには、学生の主観的な自己評価だけでなく、教員の客観的評価と適切な指導をセットで提供することが重要です。今回のDXでは、eポートフォリオシステムと授業支援システム(LMS:Learning Management System)との統合による学習環境の進化、360度カメラや収録動画のためのサーバの増強などが実現しました。学生一人一人の学修成果がよりきめ細かく残せるようになり、より質の高い指導ができるようになったのです。本学らしい「学びの仕組み」が、より真価を発揮しやすくなったといえます。この新しい仕組みが全学にスムーズに浸透するように、DX推進役の一人として、これからも力を尽くしていきたいと考えています。

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音楽科:合唱指導時の実技指導に活かした実験(360度動画カメラ、ウェアラブルカメラ)
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ウォーミングアップ学習での活用事例

(第一回)関西国際大学のDX教育への挑戦!

採択より約1年、DXプロジェクトをリーダーとして牽引してきた山下泰生副学長が、現在進行形の変革の全体像と、「学び」の可能性を大きく広げるビジョンを語ります。

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副学長 山下 泰生教授
学生の成長をうながす「学びのPDCA」

現在、関西国際大学では<「学びの仕組み」のDX推進による能動的学修の実現>と名づけたDX計画が進行中です。「DX」というと、いかに先進的なテクノロジーやシステムを導入するか、という点ばかりが注目されがちですが、これらはあくまで手段であり、本当に重要なのは「能動的学修の実現」です。
 本学では、1998年の開学と同時に全国初の「学習支援センター(現在は学修支援センター)」を設置して学生の学びをサポートしてきました。また、4年間の学びの軌跡を蓄積し、みずから振り返ることができる「学修ポートフォリオ」もいち早く導入しています。加えて、成長の道しるべとなる全学共通の教育目標として「KUISs学修ベンチマーク」を制定し、評価基準も明確に示しています。
 これらの仕組みを活用し、学生は学期ごとに自分が何を学び、どう成長してきたかを振り返り、強みと弱みを明らかにし、改善点を見つけ、次の目標を立て、日々の実践に活かします。つまり、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という「学びのPDCAサイクル」を回しながら成長し続けることができるのです。今回のDXの狙いは、こうした仕組みを進化させることにありました。
 もちろん、これまでも「デジタル化」は積極的に進めてきました。インターネットを介してオンライン講義や課題提出などができる学習支援システム(LMS=ラーニングマネジメントシステム)は2004年に構築していますし、2006年には学修ポートフォリオをデジタル化してeポートフォリオに刷新しています。いずれも15年以上の運用実績があり、かなり早期の取り組みといえると思います。ただ、早かったゆえに時代に合わなくなった部分があることも事実です。

まなびの仕組み

攻めと守り、2つの視点でシステムを変革

そこで、今回のDXでは、主に2つの観点から変革を進めました。
 第一に、システムを使いやすくする「守りの改革」です。本学では、LMSとeポートフォリオがそれぞれ独立した別のシステムとして構築してきたため、両者がスムーズに連携していないという問題がありました。たとえば、LMS上で遠隔講義を行うと、そこで提出されるレポートなどはLMS上に蓄積され、eポートフォリオに自動的にデータが同期されないのです。こうした使い勝手の悪さを改善し、よりシームレスに使えるようにシステム的な統合を進めています。
 第二に、学びの質を高め、学生の成長を促す「攻めの改革」です。本学では「学びのPDCA」を回すために、学期ごとに学修の振り返りと評価を行う「リフレクション・デイ」を設けています。このとき、評価の根拠として活用するのが、eポートフォリオ上に蓄積した成績、レポート、各種教育プログラムの参加記録といったさまざまな学修データです。これらのデータをDXでさらに充実させ、客観的かつ科学的な「オーセンティック評価(真正な評価)」ができる環境をめざそうとしているのです。
 たとえば、教育学部の「模擬授業」や、看護学科の「看護実習」のような実践型の科目においては、単に試験の成績だけでは「何がどこまでできているか」が明確に分かりません。しかし、実際のパフォーマンスの様子を動画で記録しておけば、目線、動き、発声など細かい部分まで客観的に評価でき、改善点が明確になりますし、学生同士、あるいは教員を交えたピア・レビュー(相互評価)も可能になります。
 すでにウェアラブルカメラや360°カメラは導入して、実習型科目を中心に活用が始まっています。今後はさらに専用サーバも導入し、スムーズに動画編集や大容量データ処理できる環境を整えていく予定です。

卒業後も頼れる「学びのプラットフォーム」へ

DX計画はまだ途上ですが、学びの仕組みの強化が進めば、今後ますます学びの可能性が広がっていくことは間違いありません。
 コロナ禍で遠隔講義が当たり前になり、かなり自由に学べる環境が整いつつありますが、それがさらに加速するのです。臨場感のある高品質なオンデマンド講義の蓄積が進めば、学びの質も向上しますし、教育実習、インターンシップ、留学のような学外活動で大学を離れざるをえない期間中も、しっかり学びが継続できるようになります。
 本学では、コロナ禍で日本に入国できなくなった留学生のために、すでに海外在住者への遠隔講義の提供を始めていますが、今後は国内外の提携大学との連携を強化し、相互に受講し合える環境整備も進めていく予定です。世界がつながり、学生時代に得られる学びの幅は飛躍的に広がります。
 キャリア形成もより強力にサポートできるようになります。eポートフォリオには「学修成果サマリー」という機能があり、今も4年間の学びの成果がわかりやすく可視化できるようになっています。ここで活用するデータも、今後は質・量ともに充実し、就職活動に際しての自己分析や自己アピールにより使いやすくなるでしょう。
 さらにeポートフォリオは、卒業後も長く活用できるシステムに発展させようと計画しています。本学の卒業生は、社会人になってからもeポートフォリオシステムに活動実績を継続的に蓄積し、個人の知的資産として活用できるようになるのです。
 人生100年時代です。もはや生き方、働き方はひとつではなくなり、「学び」も学生時代だけで完結するものではなくなっています。いったん就職しても、転職や独立などの転機を迎えるたびに新たな「学び」が必要になるのです。そんなとき、母校に学びのライフログが集約されていて、相談できる教員がいて、必要な教育コンテンツが揃っていて、いつでも「学び直し」ができる......。そんな環境が整っていれば、とても頼りがいのある人生の足場になるはずです。
 大学を「学びのプラットフォーム」として進化させていく──。今回のDXを機に、そんな先進的な仕組みづくりにチャレンジしたいと考えています。

関西国際大学の教育改革の実績