高等教育研究開発センター

高等教育研究開発センターの役割

高等教育のユニバーサル化とともに、学生の学習目的や学力・意欲などが急速に多様化しています。このような状況において、学生の高等学校から大学への円滑な「移行」を促進することが重要となっています。そこで本学では、学生にとって重要な「移行期」にあたる「初年次」(大学の1年目)の教育に力を入れ、高等学校から大学への円滑な移行を促進する、さまざまな教育プログラムを実施しています。

また、社会の変化とともに、大学は、四年間の教育を通して、「学士」という学位を与えるに値する教育内容と質を保持しているかが問われるようになりました。そこでは、教育デザインと有効なメディア活用のための取り組みが求められています。そこで本学では、教育の改善と質の向上を目指し、学術的かつ実証的な研究と、それにもとづいた教育プログラムの設計・開発を行なっています。

同センターの活動

本センターは、初年次教育部門、教育開発部門、メディア教育部門の三つからなります。初年次教育部門では、学生の高等学校から大学への円滑な移行を促進する、「初年次教育」に関する研究と教育プログラムの開発を行なっています。教育開発部門では、学士課程教育における質保証に関する研究と教育プログラムの開発を行ない、メディア教育部門では、インストラクショナルデザイン(ID)の知見を活用した「教育におけるICT活用促進」に関する研究と関連プログラムの設計と開発を行い、教育の改善と質の向上に努めています。

また、本センターは、神戸山手・尼崎・三木3キャンパスの教職員が一堂に会する年間に計5日間のPD(Professional Development:大学の教職員の専門性を強調し、教員研修(FD)、職員研修(SD)等をカバーし、教職員の専門的能力開発を目指した組織的な取り組みの総称)研修会を開催し、組織的な教育力の向上に寄与しています。内容は、「学期の主題」に基づく科目の統合化、アクティブ・ラーニングの推進、シラバスの改善、ルーブリックの活用、eポートフォリオの充実、各種データの分析、優れた教育実践の共有、海外の先進的取り組みに学ぶことからオフキャンパスプログラムの充実まで、多岐に渡ります。教職員の研修会ではありながら、毎回学生の参加を促していることも、本学PD研修会の特筆すべき点です。

本学PD研修会の内容

(2020年度)

年間テーマ:「2021年度 3キャンパス新体制スタートのための教育活動アセスメント」

日程 場所 内容
第1回

8月20日(木)/

21日(金)

尼崎 ●本年度着任された教職員向けオリエンテーション
●教育・学習活動におけるコロナ対応から課題提起ならびに学科の課題抽出ワーク
●「科学研究費補助金の申請に当たって」(愛知教育大学・後藤博明先生講演)
●「コロナへの対応を教授学習パラダイム転換の機会に」(桐蔭学園理事長・溝上慎一先生講演)
●【パラレルセッション】
①遠隔で授業を受けた学生からの声
②遠隔・対面授業における1年生への対応・支援(リフレクション面談を想定して)
③本学学生の出口に関わる課題
●学科別問題点の整理と共有
●秋学期・2021年度を睨んだ授業デザイン検討ワーク
①-1オンラインでも学べる授業を設計するための教訓を引き出す
①-2オンラインでの学習指導におけるtipsと問題点を共有する
②学科の学修フローチャートを授業デザインの観点で再チェックする
第2回 9月17日(木) 尼崎 ●秋学期に向けて:学生指導における各システムの活用方法
●「教員による学生へのキャリアアドバイジング ~主体性を育むキャリア教育と学生支援とのつながりを目指して~」(実践女子大学・深澤晶久先生講演)
●8月PD学科ワーク「問題・原因・対応方策」に関する進捗プレゼン
●学習者中心の学びを考える:リフレクションの再確認ワーク ~メタ認知力の観点からみたアドバイジングの検討~
●1年生の学びを支えるための学科ディスカッション ~秋学期リフレクション面談の検討~
第3回

2月18日(木)/

19日(金)

尼崎 ●次年度着任予定の教員向けオリエンテーション
●2020年度の教育と学習の総括/今後の展望
●個別最適学習と協働学習を両立させた新たな教育へ
●「重要科目に焦点化したパフォーマンス評価による学習成果の可視化」(京都大学・松下佳代先生)
●学科ワーク
①ゼミを軸とした「現実の文脈に近い学習活動と評価」のための学科・学年・学期ごとの関連科目の抽出
②学科の課題と対応方策の検討
③学科発表
●教育のデジタル化をニューノーマルに:オンライン授業のススメ
●シラバス作成のための授業デザイン確認

(2019年度)

年間テーマ:「『重層構造の組織的な教育の仕組み』の具現化に向けて」

日程 場所 内容
第1回

8月21日(水)/

22日(木)

尼崎 ●本年度着任教職員向けオリエンテーション
●「将来予想が困難な時代における学びの実践にむけて」「学修成果の可視化に向けた評価方法の理解-コモンルーブリックのワーク及びeポートフォリオの活用について-」
●「学習者の思考を刺激する発問」(愛媛大学・中井俊樹先生講演)
●「各学部の『考えさせる教育』への質的転換を目指したワークー経験学習と授業のシナジー効果を高めるためにー」(「生徒指導論」科目の実践から/初年次教育の実践から/経験学習の実践から)「各学部のゼミ(総合演習)科目における『思考力を深める』ためのテーマ設定ワーク」
●コース選択制プログラム
①ルーブリック・モデレーション入門コース
②教育、研究指導に生かす情報検索リテラシーコース、ウェブクラス・eポートフォリオ等のICTを活用した授業デザインコース(基礎)
第2回 9月20日(金) 尼崎 ●「質問会議を活用した授業の紹介と教員間の同僚性の向上について」(創価大学・望月雅光先生講演)
●ゼミ科目における「思考力を深める」ための学習目標・テーマ設定ワーク(8月PDの続き)
第3回

2月13日(木)/

14日(金)

尼崎 ●「本学の組織的な教育の充実に向けた全学的な課題」「本学のアセスメントポリシーに基づいた教育改革の課題について」
●「アクティブ・ラーニングとリーダーシップ教育」(早稲田大学・日向野幹也先生講演)
●「課題発見力・課題解決力の涵養に向けた共愛学園前橋国際大学の取組」(共愛学園前橋国際大学・大森昭生学長講演)
●「大学教育再生加速プログラム(AP事業)における課題解決型インターシップの取組みと課題」
●「科目間連携を踏まえたゼミ改革ワーク」「シラバス作成に関する共有ワーク

(2018年度)

8月テーマ:「『専門的知識・活用力』を身につけるために必要な教育方法とは何か」
9月テーマ:「『専門的知識・活用力』『問題発見・解決力』を身につけるために必要な教育方法とは何か」
2月テーマ:「次年度の5学部体制に向けたカリキュラムの履修指導の準備はできているか」

日程 場所 内容
第1回

8月22日(水)/

23日(木)

尼崎 ●本年度着任教職員向けオリエンテーション
●「2040年に向けた高等教育の将来構想と本学が取り組むこと」「2019年度からの新学部体制の方向性について」「IRデータに基づく各学部の学修成果の可視化について」「学修成果の可視化に向けて‐教育方法、成績評価の自己点検‐」
●「PBLの授業設計に向けて」(同志社大学・山田和人先生講演)
●「新学部カリキュラム・マップ作成のワークショップ」
①②(大阪大学・佐藤浩章先生講演・ワークショップ)「新学部のカリキュラム・マップツアー」(ポスターセッション)学部代表者によるカリキュラム・マップ発表
第2回 9月20日(木) 三木 ●「現行の教育方法、教育評価の課題と新学部に向けた改善プランについて(5学科)」「パネルディスカッション形式による質疑」
●「シラバスチェックの自己点検Ⅰ:チェックシートで点検・修正ワーク」「同Ⅱ:ICT活用の観点で修正ワーク」
●「ケースメソッド教授法の共有ワーク」
第3回

2月14日(木)/

15日(金)

尼崎 ●「中教審グランドデザイン答申後の行方」「IRデータを活用した本学の自己点検評価」
●「新学部の学修フローチャートに関するポスターセッション~ギャラリーツアー及び各新学部代表者によるプレゼンテーション~」「新学部の学修フローチャートを踏まえた履修指導のシミュレーション」
●「学士力の質保証-『卒業研究』の実質化に向けた授業設計の見直し-」
●「アカデミック・ライティングを通していかに学生の『思考を鍛える』のか」(桜美林大学・井下千以子先生講演)
●「学生の視点に立ったシラバス作成の自己点検ワーク」

同センターの歴史

1998年4月 本学開学と同時に高等教育研究所を開設。
1999年4月 本学初の初年次教育プログラムとして「講義の攻略法」「ノートテーキングの方法」を、学習支援センターのショートプログラムとして開講。
2000年4月 「講義の攻略法」「ノートテーキングの方法」を基礎に、全学基本教育科目として「学習技術」を開講。
2002年4月 「学習技術」の教科書『知へのステップ』をくろしお出版から刊行。同年度の全国大学生協の売上第13位。
2004年4月 高等教育開発センターを開設。
2004年7月 「大学のユニバーサル化と学習支援の取組」で文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム」に採択される。
2004年8月 初年次教育研究開発センターを開設。
2005年4月 全学共通科目「キャリアプランニング」を開講。
2006年3月 テキスト「知のワークブック」をくろしお出版から刊行。『日本創造学会』著作賞受賞。
2006年7月 「初年次教育の総合化と学士課程教育への展開」で文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム」に採択される。
2008年4月 高等教育開発センターと初年次教育研究開発センターを統合し、高等教育研究開発センターとする。
2009年4月 「仕事とキャリア形成I」、「仕事とキャリア形成II」を新規開講。
2009年7月 「出遅れない就職活動へ誘うための重層的支援」で文部科学省「学生支援推進プログラム」に採択される。
2011年4月 高等教育研究開発センターにキャリア教育部門を置く。
テキスト「夢をかなえるキャリアデザイン」をくろしお出版から刊行。
2012年4月 「キャリアプランニング」を発展解消し、「初年次セミナー」を新規開講。
2012年4月 文部科学省平成24年度「大学間連携共同教育推進事業」に採択(3ヶ年)され、高等教育研究開発センター所管の取組としてスタート。
2014年4月 キャリア教育部門をキャリア教育委員会として独立させる。
2015年4月 文部科学省の「大学教育再生加速プログラム」(Acceleration Program for University Education Rebuilding : AP)に、テーマⅠ(アクティブ・ラーニング)+テーマⅡ(学修成果の可視化)の複合型で採択され、人間科学部を中心として取組をスタート。
2015年4月 「学期の主題」に基づく科目統合の取組を全学的に開始する。
2016年4月 「ラーニングルートマップ」の取組を全学的に開始する。
2018年3月 到達確認試験の実施。
2018年4月 高等教育研究開発センターにメディア教育部門を置くとともに、インストラクショナルデザイン(ID)の知見や、ICTの有効活用を授業設計に役立ててもらうことを目的として、教員支援サイトを立ち上げる。
5学部5学科体制へ向けて「学修フローチャート」の取組を全学的に開始する。

スタッフ

高等教育研究開発センター長 中嶌 康二(社会学部 准教授)
同センター長代理 谷口 一也(教育学部 准教授)
初年次教育部門長 田中 亜裕子(心理学部 准教授
教育開発部門長 吉田 武大(教育学部 准教授)
メディア教育部門長 渡辺 卓也(社会学部 教授)