教員紹介(国際コミュニケーション学部 観光学科)

准教授

髙根沢 均 (Hitoshi Takanezawa)

所属
国際コミュニケーション学部 観光学科
現代社会学部 観光学科
専門

西洋建築史、文化遺産学、ヘリテージツーリズム

主な担当科目(学部)

観光学概論、世界遺産論、ヘリテージツーリズム論、地域創造論

■ 現在の研究テーマ(または専門分野)とその専門分野を志した理由・きっかけを教えてください。

今、特に力を入れて取り組んでいるのは、観光を通じた文化遺産の維持保全というテーマです。近年、観光需要の多様化とインバウンド観光の拡大が進むなかで、世界遺産に登録されるような著名な文化遺産ばかりではなく、地域の伝統的な祭りや生業の風景、そして日常生活ですらその地域や共同体の文化的な特殊性を示すものが観光対象として注目されるようになってきました。しかし、すでに日本の地方は過疎化・高齢化が進み、多くの地域で伝統文化の維持そのものが困難になっています。

私が現在ゼミの学生たちと活動している丹波篠山市福住地区もまた、同じ悩みを抱えています。福住は、国の重要文化財である伝統的町並みと市の文化財である二つの伝統的祭りをもつ歴史ある地域ですが、やはり過疎化・高齢化によってこれらの伝統文化の維持という課題に直面しています。

私は、2014年の丹波市の豪雨水害の復旧ボランティアに参加した際に、たまたま福住地区の古民家ゲストハウスに滞在し、その美しい田園風景に魅了されました。この風景を維持するために、人々の交流と経済効果を生み出す『観光』という視点からできることはないか、と宿の主人と話し合ったことが、このテーマに取り組むきっかけになりました。そのために、イタリアのアグリツーリズモという農家観光やヘリテージツーリズムの手法を研究し、学生の皆さんと実際の地域活動で役立てたいと考えています。

■ プロフィール

私は茨城県の出身で、バスが1日数本しかないという結構な田舎で小学校時代を過ごしました。小学校を卒業するときに水戸市に引っ越して、都会(?)の暮らしに戸惑いながら中学校で吹奏楽に出会ったことは大きな財産でした。ホルンパートに配属されて中学・高校は吹奏楽に熱中し、大学からは管弦楽団に入って毎日練習に明け暮れる日々を送りました。大人数で一つの音楽、ハーモニーを完成させるという作業を通じて、妥協せずに取り組む大切さを学んだように思います。

また大学では中世ドイツ史を専攻し、さらに高校の世界史の教員を目指して大学院の教育研究科に進学しました。大学院修了後は、教員になる前に数年だけ一般企業で働き、ついでに世界の国々を観ておこう、と考えて、海外専門の旅行会社に就職しました。ところが、世界のいろいろな文化に触れたことが大きな刺激となり、もっと深く学びたいということで大学院に舞い戻ることになりました。

2度目の大学院では西洋建築史を学び、イスタンブールのハギア・ソフィア大聖堂(現アヤソフィア博物館)の学術調査を中心に、イタリアやリビア、シリア、ヨルダンといった地中海地域のいろいろな教会建築や遺跡の調査に参加してきました。当初は保全のための調査が主目的でしたが、やがてこれらの文化遺産の保全と観光が不可分となっている現状に直面することになりました。特に、人々の暮らしと文化遺産が密接につながっている場合、観光の影響はプラスとマイナスの両側面に作用します。文化遺産保全と観光活動の適切なバランスを見出さなければならないという現場での実感が、現在の研究活動の原点になったといえるでしょう。

■ 高校生へのメッセージ

積極的に旅をしてみてください。自分の生活する地域を飛び出して、いろいろな世界、いろいろな地域を訪れることで、予想もしなかった出会いや経験を得ることができます。さらには、そうした旅を通じて得た経験が、自分の生活する地域に対する新しい観方をもたらすこともあります。人生を変えるような出会いや経験があるかもしれません。これまで気づかなかったような自分の可能性が見えてくるかもしれません。ぜひ旅をしてみましょう!

■ 講演・取材など協力可能なテーマ

世界遺産(文化遺産)や初期・中世教会建築史、ヘリテージツーリズム、イタリアのアグリツーリズモ