学長室

202104.02
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【学長室】2020年度学位記授与式 学長式辞

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 ご卒業おめでとうございます。大学院修了者14名、学部卒業者560名の皆さんに学位記を授与できました。皆さんが様々な出来事を乗り越えて卒業の日を迎えられたことを心より嬉しく思います。おめでとうございます。
 本学は昨年4月1日に神戸山手大学と統合し3つのキャンパスになり、今回現代社会学部の皆さんを関西国際大学の卒業生として送り出します。式の最後の学歌は同じ法人となった神戸山手女子高等学校の音楽科の生徒の皆さんが合唱してくれます。


 皆さんにとってはこの一年はどうだったでしょうか。キャンパスでの最後の一年が新型コロナウィルス感染症によって大変不自由なものになり、学習はもちろんのこと、就職活動や課外活動も含め学生生活全体が全く予想外のものになってしまったことは残念であろうと思います。本日もこの後の卒業パーティは開催できませんし、集まっての会食も自粛してほしいと皆さんにお伝えしています。
 ふりかえってみれば、本学ではコロナ禍に対し、サーモグラフィーや厚生労働省の推奨するアプリCOCOAへの登録をキャンパス入構の条件にするなど、皆さんの安全と学習の遅れを避けることの両立に向け、大学としては最善を尽くしてきました。
 本日の学位記授与は、例年とは異なり、ご来賓や保護者の皆さんを会場にお迎えできず、式の様子を後ほどWEB上で見ていただくことしかできません。映像でこの式典をご覧になられるご家族の皆さまには、ご子息ご息女のご卒業を心よりお慶び申し上げますとともに、このような形での式典となりご参列いただけないことをお詫び申し上げます。
 本日の式典では、3密を避けるために例年のようにアカデミックガウンを着用せず、学位記こそ渡すことはできましたが、祝福の握手もできませんでした。しかし、本日はキャンパスのある神戸市、尼崎市、三木市の市長よりビデオメッセージを寄せていただいております。公務ご多忙の中、本日の式典に花を添えていただけたことにこの場をお借りして感謝申し上げます。


 さて、皆さんの卒業にあたり、今日はコロナ禍など災害についてと、2人のリーダーの話をしたいと思います。
 さる3月11日には東日本大震災から10年という節目を迎え、今なお被害からの復興への道のりがまだ険しいことを実感させられました。これまでに確認された死者と行方不明者は1万8425人、また、避難生活などで亡くなった「震災関連死」を含めた死者と行方不明者は2万2200人にのぼります。突然訪れた自然災害と原発事故が重なり、居住地域の違いや震災時にどのような対応であったかによって生死が分かれました。忘れてはならない悲劇であり、自然がもたらした災害や大事故の前に、人間ができることの限界と多くの教訓を私たちは学ぶことになりました。
 今回のコロナ禍においても、私たちから多くのものが奪われました。これまでの累積で世界全体では1億1800万人の感染者となり、263万人の人命が失われました。本学でもこの1年間に何人かの感染者は出ましたが、クラスターを発生させなかったことは、皆さんが感染防止に協力してくださったおかげだと思っています。
 直接的な感染症の被害だけではなく、残念なことに世界中で潜在化していた多くの問題が表面化させました。中でもアメリカのBlack lives matterのような人種差別問題、性別による差別、先進国と途上国の格差、さらには貧冨の格差などが生命を左右した事態も数多く起きています。さらに差別を受けていた黒人の人々の中からアジア系住民を暴力で迫害するという事件が相次いで起こっているという報道を耳にすると、弱者から弱者への迫害の連鎖のようで複雑な思いがします。


 自然災害は確かに恐ろしいですが、コロナ禍を通して私たちに気づかせてくれたのは、人間自身の中にある弱さと強さであります。コロナ禍の中で、人間の中にある偏見や差別意識が原因となって、より立場の弱い人々に対して、差別や迫害をしてしまうということです。こうした行動について皆さんはどう思いますか。正しくない、間違っている、と思われるでしょう。確かに冷静に考えればよく分かるはずなのですが、場面によってはその感覚や認識がおかしくなってしまう、ということが我々人間の中には内在しているのです。


 危機に直面した際の、解決に向けての答えは一つとは限りません。まさに答えが一つでない課題です。ここで、コロナ対応の成功例と言われているニュージーランドのアーダーン首相の話をしたいと思います。彼女はニュージーランドが観光収入に大きく依存しているにもかかわらず、早くに国境を閉鎖し、海外との往来を遮断するという強い政策をとり、その結果感染拡大を防ぎ、最もうまくコロナに対処したと評価されました。観光収入は激減したのですが、彼女は国民に週4日労働を提案し、賃金据え置き、余暇はレジャーなどを自国内で楽しんでもらうという方策を取りました。レジリエントな対応です。国民全体にスローダウンを呼び掛けた決断力と実行力には敬服します。彼女の危機に動じない判断と行動を見ていると、アメリカの公民権運動の指導者であるキング牧師の言葉をいくつか思い出します。


We must accept finite disappointment, but never lose infinite hope.
私たちは、限りある失望を受け入れなければならない。しかし無限なる希望を失ってはならない。


The ultimate measure of a man is not where he stands in moments of comfort and convenience, but where he stands at times of challenge and controversy.
人の真価がわかるのは喜びに包まれている瞬間ではなく、試練や論争に立ち向かうときに示す態度である。


Even though we face the difficulties of today and tomorrow, I still have a dream.
私たちには今日も明日も困難が待ち受けている。それでも私には夢がある。


そして、
Take the first step in faith. You don't have to see the whole staircase, just take the first step.
疑わずに最初の一段を登りなさい。階段のすべてが見えなくてもいい。とにかく最初の一歩を踏み出すのです。


 私は皆さんに、「困難に直面しても、決してあきらめず、最初の一歩を踏み出す勇気を持ち続けてほしい」ということを申し上げたい。今後、様々な困難や試練に直面しても、決してあきらめず"最初の一歩を踏み出す"勇気と実行力を持ち続けてほしいと思います。


やらねばできぬ!やればできた!もっとできる!


 皆さんの可能性に誠実であってほしいと思います。
 最後に、コロナ禍が収まった際には、是非皆さんの卒業パーティをホームカミングディの日にキャンパスで行いたいと思っています。是非ホームカミングディに戻ってきてください。


 改めて申し上げます。ご卒業おめでとうございます。そして、また会いましょう!
 Congratulations and see you again!


2021年3月16日
学長 濱名 篤

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