学長室

202104.15
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【学長室】2021年度入学式 学長式辞

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 ご入学おめでとうございます。ようこそKUISsへ。国内では北は青森県から南は沖縄県まで39都府県から、海外からは中国、ベトナム、韓国、インドネシア、マレーシア、ミャンマーの6か国から、大学院18名、6学部747名の皆さんが入学式を迎えられるにあたり関西国際大学を代表し、お祝いの言葉と歓迎の意を表します。

 さて、コロナ禍が始まり2年目となります。皆さんも様々な不安や不自由さを乗り越えて今日の日を迎えられたと思います。振り返ると、コロナ禍の状況は、国内のコロナによる感染者数は現段階で47万7千人余り、世界では感染者数1億2700万人を超えており、昨日緊急事態宣言に準じた対策を可能とする「まん延防止等重点措置」の発出が決定し、4月5日から1か月間、兵庫県、大阪府、宮城県に適用されることになり、神戸市や尼崎市も対象地域に指定されました。変異株が広がったことにより再び緊張感が高まり、第4波の到来を警戒しなければならない状況になってきています。
 とりわけ、若者の感染率が高まっていることは、皆さんにとっても他人事ではなく、昨日のガイダンスで説明があったような感染症対策のルールを必ず守っていただかなければなりません。本学のコロナ感染症対策は文部科学省やマスメディアからも細やかで学生に寄り添った対応だと評価していただきました。私たちは皆さんの安全と学習の遅れが生じないように、この2点を両立させるよう対策をとってきました。しかし、これからは皆さん自身がルールを守り、体調管理を行い、心身に不安を感じた時には保健室やアドバイザーに相談し無理をしない対応を取る自己管理が不可欠です。

 本日の入学式は、感染症拡大予防の措置を講じるため午前と午後の2部制とはなりましたが挙行することができました。しかし例年のように皆さん一人一人とお祝いの握手をすることや、来賓をお迎えするといったことは叶わない状況となりました。
 日本国内での死者も9千人に達しましたが、この1年間で世界ではすでに、279万人以上の人命が失われたという悲劇ですが、それとともに、様々な社会的課題を生じさせています。生じたというより潜在的にあった課題・問題が表面化したことを見落としてはなりません。
 その一つが差別・迫害の顕在化です。貧富の差、人種、民族、性など様々な属性などの違いによる格差がコロナ禍によってより拡大して表面化しました。アメリカでのBlack lives mattersという運動が昨年起こりました。この運動の原点というのは、1950年代の後半から60年代の前半にかけて繰り広げられた公民権運動、人種差別に対する運動が原点であろうかと思います。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、ノーベル平和賞をもらわれましたが、30代で暗殺をされた非常に優れた指導者でありましたが、キング牧師がワシントンDCで集会を開いたとき、20万人以上の人が参加したといわれています。彼のその時の演説は今でも歴史的に名演説として語り継がれています。"I have a dream"という言葉を何度も繰り返しながら、この世界、アメリカ社会から差別というものがなくなっていくという未来、そういう夢が実現していくように言葉を変えて何度も繰り返されていました。それから57年後に同じような人種差別による悲劇が起こったことは悲しいことであります。新型コロナウイルス感染症が中国から世界に広がったことから今度はAsian Hateがアメリカで広がり、アジア系であるというだけで暴言や暴力の対象にされる事件が急増しています。悲しいことに加害者が黒人であったりすることが多いと言われています。弱者がさらに自分たちより立場が弱い人に対し、差別や迫害を行う迫害の連鎖は大変悲しいものであります。何の罪もない人が人種や外見で襲われるということの深刻さを想像してみてください。テニスの大坂なおみ選手や錦織圭選手が#Stop Asian Hateという行動を起こしていますが、皆さんはこうした出来事や彼らのアクションをどのように思いますか?
 本学の学歌の歌詞には、「心の境界線が消えて無くなる」というフレーズが繰り返し使われています。多様性を認め、相手を尊重するという素敵なメッセージが込められた学歌です。皆さんも想像してください。いつ、どこで生まれたかによって決まってしまう生得的な属性や偶然弱い立場に立った場合、偏見や差別の対象になるかもれないのです。新型コロナウイルス感染症に感染してしまった人に対する差別も同じことで、相手の立場に立って考えるということを忘れないでください。自身の心の地図から境界線をなくしていただきたいと思います。そして、この学歌を1日も早く歌えるようになっていただきたいと思います。今日は感染予防への配慮もあり、同じ法人の姉妹校である神戸山手女子高等学校の音楽科の皆さんに後ほど歌ってもらいます。

 さて、例年この式で私が新入生の皆さんと交わす祝福の握手の代わりに、先ほど手渡したものは、本学の教育ミッション3Cと皆さんに4年間で身につけてほしい到達目標であるKUISs学修ベンチマークが書かれた「しおり」です。大学では、SNS上に溢れる情報だけではなく、定着した知識や情報について文献を通して得ていく機会が増えます。その過程で、皆さんがどのような力を身につけるために学ぶのかを何度も思い出すことができるように作成したものです。
 濱名山手学院の教育ミッションとは、他者を尊重しつつ、主体的・能動的に自らの人生を切り拓くことができる人間を世界に送り出すという本学院の使命と、それが実現できる人間には3つのC、すなわちCommunication、Consideration、Commitmentの3つの力を身につけることが必要であるというメッセージです。Communicationとは情報の受発信という伝達や対話、さらには異なる意見の調整ということができるという意味です。Considerationは辞書では熟慮や考慮が第一義で出てくるでしょうが、学術的には考察つまり情報や事実に基づき論理的に筋道を立てて考えるという意味があります。また、相手のことを思いやるという語彙もあるのです。Commitmentは学び考えた結果自ら参加し、社会や他人のために貢献していくということが含まれています。本学の建学の精神は「以愛為園」人に対する思いやりや人を受け入れる姿勢をもった人間の育成のための学園でありたい、ということですが、3Cはその発展形であるともいえます。
 皆さんにはこうした3つのCを卒業までに身につけ、変化の激しい社会の中で、能動的で自律的に世界で活躍できるようになってほしいのです。3つのCが身についているかどうかを自分自身で点検し、評価してもらうための尺度が到達目標KUISs学修ベンチマークです。

 現在の社会、そしてこれからの社会の在り方には不確実性が伴います。コロナ禍の終息もその一つですが、グローバル化や、AI、デジタルトランスフォーメーションによる技術革新、産業構造や就業構造の流動化といった急激な社会の変化の中、将来予測が困難になってきているのは事実です。卒業したら就職できる時代ではなくなっています。この4年間避けて通ることのできないグローバル化、コロナワクチン一つをとっても他の国との関りがなければその見通しすら立っていないでしょう。グローバルな視野での情報、技術や物資の交流があることにより、出口がうっすら見えている状況にあります。現在は海外との往来も制限され、本学の特色ある教育プログラムであるグローバル・スタディも例年のようには実施できていません。しかし、リモート留学や海外の協定校の授業を英語で受けるなど、避けて通ることができないグローバル時代に向けて皆さんの歩みは決して止まらせてはいけません。世界に広がる協定大学の中から3つの大学の学長から皆さんへのお祝いのメッセージを後ほど紹介してもらいます。

 これからの時代を生きる皆さんにとって、大学での学びはより重要となっていきます。学歴を持っただけで次代を生き抜くことはできません。皆さん自身が次代を生き抜く基盤となる力をこの大学生活の中で身に着けていただくことが重要です。心理学の用語でレジリエントという言葉があります。一般的には柔軟性を持って対応していく力という意味の言葉です。皆さんが変化にレジリエントに対応し、未来への活路を見いだす原動力をこのキャンパスにおいて学んでいただきたいと思います。
 皆さんが今日から学ぶことになる関西国際大学は、多様性を尊重し、自らの体験や経験と専門知識を両面から学び、総合的に活用できるようになっていただくことを重視する大学です。大学生にとっての最大の使命は、学習することを通して成長することです。卒業しただけでは皆さんの未来は必ずしも約束されるわけではありません。自ら目標を定め、自ら計画し、自ら能動的に学び、自らの歩みを点検そして評価し、自らの成長を説明でき、自ら世界に参画し貢献していく、そんな皆さんになってほしいと思います。自身の未来のため、世界のため、自ら歩む大学生活の第一歩を力強く歩みだしていただきたいと思います。

 本学ではこの言葉をよくキャッチフレーズに使います。
 「やればできた、もっとできる」、皆さんにもぜひこの言葉を実現していただきたいと思います。最後に改めて、入学生の皆さん、保護者の皆さま、ご入学おめでとうございます。

2021年4月2日
学長 濱名 篤

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