トヨタ財団2023年度国際助成プログラム
アジアにおける市民防災エンパワメントプログラムの共同開発
東南アジア諸国は、繰り返し発生する災害によって持続的発展が阻害されています。これまで同地域に対しては、先進国からの技術移転やハード整備を中心に防災対策や復旧・復興支援が進められてきましたが、今後は各地域の市民が主体となって多様な地域のステークホルダー(NGO・大学・自治体)との協働による自律的で継続的な活動の推進が求められています。その実現のために地域活動の軸となるキーパーソンの養成が喫緊の課題です。
本プログラムでは、関西国際大学と東南アジア6か国の大学間連携コンソーシアムAsian Cooperative Program(ACP)がこれまで、学生を対象に展開してきた防災教育プログラムを、研究機関・市民団体・NGO等との協働の下、地域防災リーダーの育成プログラムとして拡充します。研究機関と地域が継続的なカウンターパートとなり、各地に市民防災の担い手を対象とした研修と顕彰の両輪制度を浸透させることで、安全で安心な社会の実現につなげていきます。
助成期間:2023年11月~2025年10月(2年間)
助成総額:870万円
プロジェクト対象国:日本、インドネシア、マレーシア
参画団体:関西国際大学、ガジャマダ大学、アトマジャヤ・ジョグジャカルタ大学、ウタラマレーシア大学、アジア防災センター、エフエムわいわい、CODE、プラスアーツ、防コミ バドラン、リンタスラジオ局、ネグレパン村、カソンガン村、Mercy Malaysia、Yan river KAMC
トヨタ財団国際助成プログラム市民ワークショップ・マレーシア
アジア市民防災推進会議―ICTを活用した避難訓練
市民ワークショップICTを活用した避難訓練の実施
マレーシア・ケダ州ヤン地区で、市民ワークショップ「ICTを活用した避難訓練」を実施しました。住民や専門家など約60人が参加しました。
日時:2025年8月28日(木)8:00 - 14:00
場所:マレーシア・ ケダ州ヤン地区
主催:アジア市民防災推進会議(ACDRI)
共催:関西国際大学、ウタラマレーシア大学、アトマジャヤ・ジョグジャカルタ大学、ガジャマダ大学、Kampung Aceh Management Center (KAMC)KAMC、Jerai Geopark Guide Association、Pen duduk Yan
マレーシアのヤン地区で、ICTを活用した災害訓練が実施されました。この訓練はコミュニティの災害対応能力向上を目的とし、台湾のGeoThings社が開発した災害情報共有システム「geoBingAn」を使って行われました。ヤン地区は、2021年8月・10月に大規模な鉄砲水被害に見舞われ、6名が亡くなり2,000軒以上の家屋などが被災した地域です。今回の訓練では、この時の教訓を活かし大雨による鉄砲水が発生したという想定で行われました。
「geoBingAn」は、マレーシアで広く普及しているコミュニケーションアプリ「WhatsApp」と連携しており、災害被災状況や必要な物資の情報をリアルタイムで共有できるのが大きな特徴です。訓練では、住民は避難所であるモスクへ避難する傍ら、各地の被害状況、避難状況、負傷者の情報などをシステム上に投稿しました。また、地域のリーダーやKAMCKampung Aceh Management Center (KAMC)は、このシステムを通じて住民への情報の一斉配信やニーズの把握を行いました。訓練後の振り返りでは、参加者からは「即座に情報を共有できるgeoBingAnを今後も利用していきたい」といった前向きな感想が寄せられ、その有効性が確認されました。





第3回アジア市民防災推進会議 開催
2025年9月2日(火)に第3回アジア市民防災推進会議がウタラマレーシア大学にて開催されました。
会議ではマレーシアで実施したICTを活用した避難訓練の報告がされた他、「ACDRI Disaster Evacuation guidebook」各国版の作成状況が報告されました。また次回の市民ワークショップを高知県黒潮町で開催することが決定しました。
発表者
- Outline of Toyota Project - Empowering Local Communities for Disaster Resilience using ICT(Dr. KAWAWAKI Yasuo, Assistant to the president for International Affairs, Kansai University of International Studies)
- Review of the ICT Disaster Evacuation Drill in Yan River Village (Mr. Kuo-Yu slayer Chuang, GeoThings, Taiwan)
- DRR Initiatives: Community Perspectives & Practices (Mr. Muhammad Ali Sobri, Jerai Geopark Guide Association)
- Developing community based disaster evacuation modul(Dr. Khaerunnisa, Head of Master of Architecture Study Program, Architecture Department, Universitas Atma Jaya Yogyakarta)

トヨタ財団国際助成プログラム市民ワークショップ・インドネシア
アジア市民防災推進会議―ICTを活用した避難訓練
市民ワークショップICTを活用した避難訓練の実施
インドネシア・ジョグジャカルタのカンプンジョゴユダン地区で、市民ワークショップ「ICTを活用した避難訓練」を実施しました。市民や地方政府防災局(BPBD)、専門家など約100人が参加しました。
日時 : 2024年9月7日(土)8:00 - 15:00
場所 : カンプン・ジョゴユダン
主催 : アジア市民防災推進会議(ACDRI) 共催: 関西国際大学、アトマジャヤ・ジョグジャカルタ大学、ガジャマダ大学、ウタラマレーシア大学、アジア防災センター、BPBD、KTB JOGOYDAN
今回の避難訓練は、「ICTの効果的な活用によるコミュニティの災害対応能力の向上」を目的とし、GeoThings社(台湾)が開発したコミュニティにおける災害時情報共有システム「geoBingAn」を使って行われました。「geoBingAn」は、インドネシアで広く親しまれているコミュニケーションアプリ「WhatsApp」を用いて被災状況や必要な物資の情報などをやり取りするシステムです。
訓練はCold Lava(※)が発生した想定で行われました。住民は避難所として設定したコミュニティホールへ避難しつつ、各所の被害状況や避難状況、怪我人の情報などをそれぞれアップしました。地域のリーダーやBPBDスタッフは、住民への情報の一斉配信やニーズ把握などを行いました。訓練終了後は、参加者全員で振り返りを行いました。BPBDスタッフからは「即時に情報を共有できるgeoBingAnを今後も利用していきたい」との感想がありました。
- Cold Lava:火山において火山噴出物と水が混合して地表を流れる現象を火山泥流といいます。火山噴出物が雪や氷河を溶かす、火砕物が水域に流入する、火口湖があふれ出す、火口からの熱水あふれ出し、降雨による火山噴出物の流動、などを原因として発生します。流速は時速数十kmに達するとされています。
避難訓練の様子



geoBingAnでの情報共有


第2回アジア市民防災推進会議 開催
9月7日(土)にインドネシア・ジョグジャカルタのカンプン・ジョゴユダン地区にあるコミュニティホール「GOR KEBON NDALEM JOGOYUDAN」で第2回アジア市民防災推進会議が開催され、対面とオンラインを合わせ16人が参加しました。会議では同地区で実施したICTを活用した避難訓練の報告がされた他、「Asian Citizen Disaster Risk reduction Leader Training Course Textbook」の作成に向けた案が示されました。
また次回の市民ワークショップをマレーシアで開催することが決定しました。

キックオフミーティグの開催(2024年1月)
1月28日(日)「KOBE Co CREATION CENTER/大学都市神戸産官学連携プラットフォーム交流拠点」にてキックオフミーティングが開催され、対面とオンラインを合わせ41人が参加しました。

濱名篤ACP議長(関西国際大学学長)の挨拶と久元喜造神戸市長からのメッセージに始まり、ガジャマダ大学、アトマジャヤ大学(インドネシア)、ウタラマレーシア大学(マレーシア)の代表などアジア市民防災推進会議(ACDRI)メンバーによる設立趣意書の調印が行われました。また、国際ワークショップにおいては、日本の会場とマレーシア、インドネシアの市民団体・NGO等とをオンラインでつないで、各国の市民防災の課題とグッドプラクティスの共有がなされたほか、それに引き続いて参加団体によるポスターセッションも行われました。その後、市民ワークショップ「日本のコミュニティ防災」として、HAT神戸エリアへのバスツアーが行われ、HAT神戸の防災施設等の現地視察が行われました。


アジア市民防災推進会議(ACDRI)の設立
ACDRIは「トヨタ財団2023年度国際助成プログラム」の支援を受けて、ACPの教育プログラムを、研究機関、市民団体、NGOなどと協力しながら、各国のコミュニティにおける防災リーダーを養成するプログラムにまで拡充させることを目的として設立されました。
メンバーは日本、インドネシア、マレーシアの3か国の実践的研究者と地域コミュニティのリーダーによって構成されています。
主な活動内容は、
- ① 市民防災リーダーの育成(ワークショップの開催等)
- ② 教材開発(プログラムコースの設計、教育教材の作成)
- ③ 教材アーカイブ(多言語によるデジタルコンテンツのストック)
- ④ 認定(Certificateの発行)と顕彰(good practiceの表彰)など
であり、これによって市民レベルでの防災力向上を目指します。さらには対象国を東南アジア各国にさらに拡大していくことを目指しています。
プロジェクト概念図

ロゴマーク

ロゴマークのキーコンセプトは「多様性」です。これは、ACDRIが目指す多様な視点と意見を尊重し、それぞれの価値を認め合う調和の取れた姿勢を表現しています。また、タンポポの種のような形のロゴマークは、市民防災意識の向上が世界各地に広がっていく様を象徴しています。
プロジェクト全体スケジュール
市民ワークショップの開催スケジュール
- 2024年 1月 兵庫県神戸市
- 2024年 8-9月 インドネシア・ジョグジャカルタ
- 2025年 8-9月 マレーシア・クダ州
- 2025年 11月 高知県黒潮町
リンク
神戸新聞(2024/1/29)
国境超え市民の防災力育成へ 関西国際大が推進会議設立 東南アジアの大学と連携「安全安心な社会実現」