関西国際大学(KUISs)は、兵庫県立三木北高等学校との高大連携において、兵庫県立三木北高等学校 全学年の生徒約200名と教員約35名を対象に、高大連携特別講演会を実施しました。今回は、本学 心理学部の板山 昂 准教授が講師を務め、「恋愛と犯罪の心理学 ストーキングについて」というテーマで、若者にとって身近でありながら深刻な問題であるデートDVやストーカー行為の心理構造について解説しました。
導入:「他人事ではなく自分事として捉えて」
講演の冒頭、板山准教授は生徒に対し、DVやストーキングといった問題は「他人事ではなく、自分事として捉えてほしい」と強く呼びかけました。交際相手との関係性について深く考えることの重要性を強調し、講演はスタートしました。


DVの定義と支配の構造
まず、DV(ドメスティック・バイオレンス)の定義から解説が始まりました。暴力には、①身体的、②精神的、③社会的、④経済的、⑤性的なものがあることを明確に示し、健全な恋愛関係は「対等な関係」であることが何よりも大切だと述べました。
また、DVの加害者像についても触れられ、DVを行う男性の多くは、男性優位思考型、補償的暴力型、心理的支配型、不安定型といった特定の思考パターンを持つケースが多いと説明されました。
特に生徒たちの関心を集めたのは、「恋人支配行動」とDVの構造に関する話でした。加害者が暴力をふるう行動は、感情の抑制が効かない衝動的な行為やイライラの発散ではなく、むしろ「計算された、理性的な判断」に基づいて行われているという指摘です。加害者は、暴力のタイミングや加減を意図的にコントロールすることで、被害者を精神的に支配し、コントロール下に置くことに繋げているという、心理学的な支配のメカニズムが詳細に解説されました。
暴力のサイクル理論とストーカー行為の心理
さらに、DVが繰り返される構造として「暴力のサイクル理論」が紹介されました。このサイクルは ➀緊張期、➁爆発期、③ハネムーン期(開放期)に分かれています。中でも、多くの被害者が関係を断ち切れなくなる要因となるハネムーン期のメカニズムが詳細に説明されました。この時期、加害者は暴力を振るった後に「もう二度としない」と泣いて謝罪したり、高価なプレゼントを買ってきたりします。被害者はこの行動に「関係が元に戻るかもしれない」「相手が変わってくれるかもしれない」という期待を抱き、結果として負のサイクルに陥ってしまう事例が散見されることが指摘されました。
次に、ストーカー行為へと話が進み、つきまといや面会・交際の要求といった具体的な行為が解説されました。ストーカー行為を行う類型の中で最も多いのが拒絶型ストーカーであるとし、その動機は交際を復活させたいという願いだけでなく、「フラれたことに対するプライド」が大きく影響しているケースが多いという心理学的背景も説明されました。


「恋」ではなく「愛」することの大切さ
講演の結びとして、板山准教授は、「人と付き合っていくうえで大切なことは、単に『恋をすること』ではなく、『愛すること』が大切である」と述べました。「恋」は自己中心的になりがちだが、「愛」は相手を尊重し、対等な関係を築くことを意味するというメッセージは、生徒たちの心に深く響きました。
講演後の質疑応答では、関西国際大学の心理学の専攻でどのようなことを学べるのかについて、生徒から具体的な質問があり、板山准教授が丁寧に回答しました。
生徒たちは、9月に実施された田中亜裕子先生の講演会(テーマ不明)と今回の板山先生の講演会を併せて受講することで、「人生を豊かにする」心理学という学問分野へ、より一層関心が高まった様子がうかがえました。
