看護学科コラム

202007.15
看護学科コラム

【看護学科】『看護師を目指したきっかけ -祖母との思い出-』

今春より新着任の老年看護学領域の谷口由佳です。

私が看護師を目指したきっかけは、「おばあちゃん子」だったことです。
子どもの頃、週末になると自宅から30分かけて自転車を飛ばし、祖母の家に泊まりに行くのが楽しみでした。
何が楽しみだったかと言うと、お布団の中で祖母が話してくれる昔ばなしです。女学校時代の提灯ブルマや、豊胸を隠すためにさらしをぐるぐる巻きにしていたことなど、少女のように恥ずかしそうに話す祖母の顔が、今も鮮明に思い出されます。

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祖母は病気がちで、私が物心ついたときには、すでにベッドで横になっていることが多く、入退院を繰り返していました。そんな祖母の役に立ちたいと思い、私は看護師を目指そうと決意しました。
しかし、時すでに遅し...、祖母は、私が看護学生の時に天国に旅立ってしまいました。私は、この時の祖母の最期がいまだに忘れられずにいます。むくみで腫れあがった祖母の顔には、かつて私に人生を物語ってくれた優しい祖母の面影はありませんでした。

私は、看護師としての臨床経験の中で、療養病床に長く勤めていました。そこで、医療の進歩で生命は救われたものの、意識障害が残り、いわゆる植物状態で余生を過ごす多くの高齢者と出会いました。祖母の最期が忘れられない私は、ここで、"人生の最期がこれでいいのだろうか......"と、いのちの尊さや死について深く考える日々を過ごしました。

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こうした経緯から、"すべての高齢者がその人らしい最期を迎えられるように"、これが私の願いであり、長い年月をかけて築いてきた私の看護です。

そして今、私の中の祖母は、この写真のように、ようやく優しく微笑んでいます。

【保健医療学部 看護学科 谷口 由佳 准教授】

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