看護学科コラム

202211.25
看護学科コラム

【看護学科】老年看護学実習での出来事

 骨折の手術直後、ベッド上安静を要する認知症を患った高齢女性の受け持ちました。実習初日から、お話を聞こうと思っても目をつぶって反対を向いたり、食事を配膳しようとするとひっくり返そうとしたり、体位変換を行おうとすると「いやー」と大声をだしてうでを叩いてきたり、学生の目には涙がポロポロ・・・。

 学生は、不安そうな表情でナースステーションと病室を行ったり来たり、病室に入っても部屋の隅っこで棒立ちの日々を送りましたが、悩みに悩んだ数日後、大きな鏡と櫛、ホットタオルをもって「おはようございます」と病室に入り、ベッド上で整容を行うことにしました。

 高齢女性は鏡の中の自身に姿を見て、「しわまみれやわ」とニコニコされながら顔を拭き、学生が女性の髪をブラッシングすると、とっても美しく微笑まれ、学生にも笑顔が戻りました。

 ある研究では、高齢者が化粧をして身なりを整えることは、喜びとなり、周囲の人とおしゃべりをすることでコミュニケーションに対する自信へとつながると言われています。

 学生が自ら考えたケアは患者様との関係性を良好にした他、女性としての自尊感情を高め「しあわせ」を感じてもらえるきっかけにもなりました。

 また、この経験によって、教員も学生も「しあわせ」を感じることができ、看護師冥利に尽きる瞬間でした。

【八木 良子 助教】

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