
心理学科ニュース
202305.26
心理学科ニュース
【心理学部】四日市市で放火犯の犯罪動機について講演

四日市防火協会から火災予防に関する講演依頼を受けた心理学部の中山教授が、5月22日の午後、三重県の四日市消防本部において「大阪駅前クリニックにおける放火事件の犯罪心理学的考察」と題して90分間の講演を行った。
その際の要旨は以下の通りである。
1.事件概要
2021年12月17日午前10時18分ごろ大阪駅前のビル4階にあるクリニック内に容疑者がガソリンをまいて火をつけ、非常階段から逃げようとする被害者に被疑者が抱き着いて阻止するなどして、最終的には院長ら26名が死亡。
2.犯行準備(スマホに残る現場の下見、大量殺人への用意周到なメモ)
6月14日 踊り場の扉を開けて寸法をとる 掃除のおばあちゃんがいるかを確認
10月22日9時58分に22人一気に入ってきた 10時1分、踊り場ドアを開けた
12月2日 ガソリン20ℓを買った
12月17日 ジッポライターに火が付くか必ず確認 スマホ位置情報をOFFにする
3.容疑者の経歴
1960年生まれ 犯行時61歳
1985年 結婚、後に子供二人
2008年 離婚後、仕事をやめ、定職につかず、ギャンブルにのめり込む
2011年 元の妻に復縁を迫り、息子を刺し、殺人未遂で逮捕 懲役4年の実刑判決
2015年 出所後、家賃収入があるため、生活保護認められず
4.過去の無差別大量殺人との比較
- 京アニ事件
2017年京都、36名死亡。今回の容疑者はガソリンで大量殺人が可能と学習し模倣 - 池田小学校事件
2001年大阪、小学1・2年生8名死亡。死刑になりたい 自暴自棄 拡大自殺?
前科13犯 自殺願望と、自己愛性・反社会性パーソナリティ障害 承認欲求が類似点 - 秋葉原事件
2008年東京、歩行者天国に軽トラックで突っ込み、その後刃物使用で7名殺害。
派遣社員で携帯の書込サイトが唯一の居場所 最後は「ワイドショウ独占」の書込みがあり、自己顕示欲が強い点で類似
5.無差別大量殺人の容疑者に見られるパーソナリティ特性
- 自己評価が高く、失敗は他人のせいにし(他責傾向)、長期にわたる欲求不満
- 事件の直前に経済的困窮と周囲から孤立で自暴自棄になり、自殺願望と社会的復讐
- ひとり死ぬのはバカバカしいと考え、最後に一花咲かせたいという強い承認欲求
- 日頃恨んでいる相手よりも、一度に多くの人を殺害できる場所を最優先して実行
6.無差別大量殺人を引き起こす3要素

7.今後の再発防止について
- 無差別大量殺人に至らないように、心理的ケアが最も重要
孤独にさせない、経済的困窮に陥らせない→再犯防止には居場所と役割を与える - 「既存不適格ビル」に2つ目の非常階段を設置することは有効か?
ガソリン使用の計画的な無差別大量殺人に対し、2方向避難の防止効果は疑問 - 大量殺人を意図しても日本では銃を入手しにくいし、刃物では多くの人を殺せない
放火による大量殺人を防ぐにはガソリンを使用させない法整備の徹底