心理学科コラム

202006.22
心理学科コラム

【心理学部】『もしもし、外出自粛要請が出ています...』

新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態の最中、都道府県からの協力要請を受けた各地の警察は、繁華街を中心として酔客らに外出自粛を促す「声かけ」を行ないました。

ただ、この「声かけ」には法的根拠がないことから、犯罪の摘発などを目的とした「職務質問」との線引きや心ない市民からの反発に、苦心する警察官の姿もみられました。

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職務質問というのは、警察官職務執行法第2条に規定されていて、「何らかの犯罪を犯し(た)・・と疑うに足りる相当な理由のある者」や「既に行われた犯罪について・・知っていると認められる者」を対象として行われ、犯罪の予防だけでなく、既に行われた犯罪の捜査のためにも用いることができる権限なのです。
緊急事態宣言に伴う外出自粛要請には強制力がなく、警察権限を拡大する規定ももちろん無いことから職務質問は行えず、警察官は、「外出自粛要請にご協力ください」と協力を求める「声かけ」のみを行い、外出の理由や自宅の住所を尋ねたりはしませんでした。(もちろん職務質問の要件に該当する人には論外ですが...。)

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しかしこのような「声かけ」は、地域の方々と連携した活動を展開する日本警察では以前から良い意味で行われてきました。

「♪も-しもし ベンチで囁くお二人さん 早くお帰り夜もふける 野暮な説教するんじゃないが・・」これは、昭和30年代に曽根史朗さんが歌ってヒットした「若いお巡りさん」という曲の一節ですが、歌詞の中身は地域に愛されているお巡りさんのユーモラスな「声かけ」が描かれています。

昨年発生した「京アニ」の放火犯は、現場近くの公園のベンチで夜を明かしたとか...、そのとき「もしもし ベンチで寝ているお兄さん・・」と声をかけられていたら...

事件・事故にタラレバを言っても詮無いことですが、職務質問とひと味違った警察官による「ホットな声かけ」は、安全安心な社会には欠かせないものと思います。

【心理学部 山本 昌宏 教授】

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