看護学科コラム

202006.29
看護学科コラム

【看護学科】『老いのイメージと加齢に伴う変化』

【老いのイメージ】
人口高齢化の進んだ日本は、地域でも病院でも、高齢者が圧倒的に多くなっています。一方、病院で働く看護職は40歳未満が6割以上であり、自身の経験していない「未知なる老い」に向き合っていくことになります。

医療の現場では自分自身が持っている「老いのイメージ」が高齢者ケアにおおきく影響を及ぼします。「心身が衰え、健康面でも不安が大きい」という否定的なイメージや、「経験や知恵が豊かである」、「時間に縛られず好きなことに取り組める」という肯定的イメージは、私たちの生活環境の中で様々な情報に接することにより形作られていきます。
自分が「老い」や「高齢者」に対してどのようなイメージを持っているのか、なぜそのようなイメージを抱くようになったのかを振り返ってみてみることは意味のあることになるでしょう。

街中で出会うお年寄りに対して「どんな人生を歩んできたひとなのかな」「どんな時代を生きてきた人なのだろう」など想像を巡らせてみることも大切なことになります。

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【加齢に伴うからだの変化】
2020年春の一番の気がかりは新型コロナウィルスの感染ではないでしょうか。毎日の情報のなかで一番よく聞くのは、「高齢者は感染しやすいので注意してください」ということではないでしょうか。なぜ高齢者が感染しやすいのか、加齢に伴う体の変化について考えてみましょう。

からだには常に安定した状態で、健康な状態に保とうとするはたらき、恒常性(ホメオスタシス)がありますが、これを維持するために以下の4つの機能が安定していることが必要です。
ストレッサー(コロナ感染)に戦い勝つ「防衛力」、ゆとりをもってストレッサーに対処する「予備力」、ストレッサーが、からだにとって過度のストレスにならないように順応する「適応力」、ストレスによるダメージを受けても修復して元に戻そうとする「回復力」です。

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この4つの機能が加齢とともにバランスが崩れ、十分に機能していない状態になると、感染に対して弱くなります。いわゆる抵抗力、免疫力の低下を招きやすくなります。

若い人も高齢者も感染予防対策が大切ですが、特にお年寄りが身近にいる人は、高齢者の加齢によるからだの変化に配慮して、より一層対策をしていくことが大切になってきます。

【高齢者の知能の変化】
加齢による心理的変化の中で、「知能」は変化するのでしょうか。知能は、知覚・言語・記憶・推理・判断などの認知機能を基にした総合的能力です。

知能は大きく分けて以下の2つによって成り立っています。

短時間で課題を解決し、新しい状況に適応してく「流動性知能」と、知識や経験を積み重ねることによってつちかわれた「結晶性知能」です。

「流動性知能」は20歳代をピークに低下傾向になり、「結晶性知能」は加齢の影響を受けにくく20歳以降もわずかに上昇していくといわれています。
高齢者は年齢とともに衰退するだけの存在ではなく、発達的な存在でもあるのです。

【保健医療学部 看護学科 沼本 教子 教授】

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