看護学科コラム

202008.24
看護学科コラム

【看護学科】『みえないモノ:with コロナの世界で生きる』

新型コロナが流行し始めたときにこれほど長く我慢する生活が続くとは思ってもみませんでした。見えない新型コロナウイルスにいつまで気を配って生活していかなければならないのでしょうか。人と「三密」の距離を守ることが生活の隅々にまで求められています。窮屈で耐えがたく、閉塞感が強いこのモヤモヤした生活に「with コロナ」と名付けないといけないのでしょうか。

病院で働いていると時々不思議な体験をします。誰もいないナースステーションで物が倒れたり(片付け方の悪かった物が自然に時間をかけて落ちただけとか、空調の風で動いたとか)、突然、電気が消えたり(長い廊下の端にあるスイッチをたまたま歩いていた人が消しただけ)とか。目に見えないものが、そこにあるように感じることはよくあることです。でも、医療者が神経をすり減らすのは、「目に見えないそこにあるモノ」です。

1.病原菌やウイルス

これらには手洗い、マスクが有効です。うがいも清潔な水の他、カテキンの入っているお茶や生理食塩水なども効果があると言われています。冬になって乾燥の季節になればポビドンヨード液(イソジン®)も有効です。

目に見えないけども確実にソコにあって私たちの命を奪うだけでなく、社会の仕組みを変え、経済的に破綻させる力を持っています。新型コロナウイルスに関してはその罹患率や死亡率等、インフルエンザとの比較が良くされていますが、国際疾病分類コードによって計算された推定値ではなく実数での比較でないとCOVID-19が医療現場へもたらす影響も、疾病の重大性もわからないといわれています(※1)。 

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現在、世界中を見てみると、第1波を終息できていない国もあります。日本では第1波は無事に乗り越え今まさに第2波の真っ直中ではありますが、私たちは次来るであろう波を念頭に社会の仕組みを変えて備えてきました。その準備が十分だったかよりも、私たち一人一人が見えないモノに実際に対処した行動をすることが求められています。

2.妄想や不安

これらには正しい知識と感情のコントロールが有効です。

今起こっていることがどういう意味があり、何と結びついて、これから何が起こるかを論理的に推論できます。医療現場では特に「エビデンス」を大切にしています。
例えば新型コロナウイルスについての生態と病態の正確なデータを集めることだけでなく、その中から事実を見極め、客観的に評価し判断するために、科学的根拠のある普遍的な過去のデータを照らし合わせて今後の計画を立てます。

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妄想は、情報の意味を読み間違え、エビデンスとなる情報の取捨選択を間違えることになります。人の不安は差別やハラスメントを導くことがあり、自分の感情をコントロールして自分自身で「見える」化しておくことで、妄想に陥らずに正しい選択ができるのではないでしょうか。

3.信念と誠実さ

新型コロナのような目に見えないモノを意識して正しい行動を取ることが私たちには必要です。

社会の中で人に関わることは、うまく信頼関係を築いて安心した環境のなかで生きていけるときもあります。しかし、自分も他人も信じられないようなときには自分の世界は狭く窮屈で先の見えないつらい世界になります。
自分を信じる強さは、人を信じる強さになります。そうして誠実に相手との世界を共有することができます。

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マスクをして「3密」を避けていても自分が予防行動をしていることを相手も予防していること信じられなければ、社会生活を続けることはできません。逆に、ただ信じているだけでは安全な社会生活もできません。

「見えないそこにあるモノ」と一緒に「withコロナ」の世界で生きていくためには、手洗いとマスクと、自分が科学的に正しい行動をしていると信じる力で乗り切りたいですね。新型コロナの流行が治まる世界を信じて今の自分が成長できるように頑張りましょう。

【引用文献】
(※1)Faust JS, del Rio C. (2020). Assessment of Deaths From COVID-19 and From Seasonal Influenza. JAMA Intern Med., 180(8):1045-1046. doi:10.1001/jamainternmed.2020.2306

【保健医療学部 看護学科 森 一恵 教授】

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