心理学科コラム

202010.19
心理学科コラム

【心理学部】『少年院では何が行われているのか』

少年犯罪は大人の犯罪に比べると、その数は圧倒的に少ないです。例えば、2018年の一年間で刑法犯として検挙された成人の数は182,605人であるのに対して、同じ一年間で刑法犯として検挙された少年の数は30,458人であり、およそ6分の1となっています。そして、少年院に収容される少年は、さらに少なく、同じ一年間でわずか2,108人となっています(数字は令和元年版犯罪白書を参照)。

このように数字で見ると、少年院には選りすぐりの非行少年たちが収容されており、手の付けられない不良者ばかりが生活している非常に危険な場所のように感じるかもしれません。
しかし、実際は、知的な制約があり、自分の気持ちを言葉で説明することが難しくて、思わず手が出てしまった少年、家庭環境が劣悪で、中学卒業後すぐに自立しようとしたものの失敗し、生活していくために犯罪行為に及ぶようになった少年、自信がなく、不良っぽく振る舞って強がることでしか認めてもらえないと思い込み、非行を繰り返している少年など、不適応や弱さを抱えている少年が非常に多いです。

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少年院は、こうした少年たちを一定期間収容し、彼らの抱える問題や特性に応じた教育や支援を行う施設です。しかし、同じ非行少年とは言っても、抱えている問題は多種多様です。そのため、教育や支援の種類も、それに応じて様々なものが用意されています。
例えば、中学生のうちに少年院に入院した少年には、義務教育を受けさせなければいけません。
また、外国籍の少年の場合には日本語での教育が難しかったり日本文化に馴染めなかったりする可能性があるため、特別なカリキュラムが必要となります。
同じように、知的水準の違いも考慮する必要がありますし、病気にかかっている少年については治療をしながら処遇していく必要もあります。

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これらに加えて、及んだ非行の種類や家庭環境、出院後の生活などを考えると、問題性は非常に複雑なものとなり、用意すべき処遇の種類も増えていきます。
例えば、薬物非行を繰り返している少年に対して、性非行の問題性について理解させたり、被害者の気持ちを考えさせたりすることは優先順位として高くはないと思います。

また、出院後にすぐに仕事をして自立しようと考えている少年もいれば、高校や大学に進学したいと考えている少年もいます。こうした少年の希望を支えていくための支援として、就労に役立つ資格を少年院の中で取得できるようにしたり、高校卒業程度認定試験を少年院在院中に受験できるように手配したりする必要があります。さらに、出院後に福祉支援が受けられるように調整する必要がある少年もいます。
少年院にはいくつか種類があり、問題性や特性に応じて収容される少年院は大まかに分けられます。しかし、同じ少年院に収容されたとしても、入院から出院まで全員が全く同じカリキュラムを受けるということはありません。
少年院では上述のような様々な教育や支援が同時並行的に動いており、集団生活を行いながら個別処遇が行われているのです。

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さて、皆さんの少年院のイメージと実際の少年院の様子は同じでしたか。それとも大きく異なっていましたか。また、このコラムを読んで少年院や非行少年に興味を持っていただけたでしょうか。
少年院から出院した少年たちを、社会の中で支えてくれる人が一人でも増えてくれることを願っています。

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