看護学科コラム

202103.03
看護学科コラム

【看護学科】『 ECMO(エクモ)のお話 』

ECMO(エクモ)は、体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation)という器械です。重症呼吸不全患者さんや重症心不全患者さんなど心臓と肺が命を維持できる十分な機能がない時に、主に呼吸の補助をするために使われることがあります。

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ECMOは酸素が足りなくなっている静脈血(心臓に戻ってくる血液)を、患者さんの身体からチューブで体外に抜き(脱血)、ポンプでECMOの人工肺に送って血液の中の二酸化炭素を取り除き代わりに酸素を加え(酸素化)、その酸素を沢山持った血液を体内に戻す(送血)、肺の機能を補う作業をする器械です。ECMOを使うことによって、肺を全く使わなくても生きていける状況(Lung Rest)を作ることができます。ECMOは肺を直接治療し改善するための治療に使われる器械ではなく、肺が自分の力で回復していく間の呼吸(肺)と循環(心臓)をサポートする器械です。

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ECMOで酸素を加えた(酸素化した)血液を患者さんの心臓に向かう静脈に戻す(送血する)場合をVV-ECMO、心臓から体に酸素の多い血液を運ぶための動脈にECMOの血液を戻す場合をVA-ECMOといいます。VV-ECMOは呼吸を補助する機能のみですが、VA-ECMOは呼吸の補助に加えて、心臓の血液を押し出す力の補助が行えます。

COVID-19(コロナウィルス)感染患者にECMOが使われ始めたのは、2020年2月頃からです。中国で急性ウィルス性肺炎患者の補助療法として使われ始め、重症患者の死亡率を約3%低下できたことが報告されています。ただ、ECMOをつける前に人工呼吸器で高圧の人工呼吸を7日間以上行っている場合は、肺が元の状態に戻れない(不可逆的な)障害を受けている可能性があり、ECMOをつけても非常に予後が悪いことがわかっています。

ECMOを使えない条件としては、①不可逆性の基礎疾患、②末期がん等が挙げられ、慢性心不全や慢性呼吸不全などの慢性臓器不全がある場合や年齢が65~75歳以上は予後が悪く、一般的には適応外と言われています。慢性的な病気で臓器の機能が低下している患者さんや老人には適用されないと思い、感染予防を心掛ける必要があります。

【保健医療学部 看護学科 高見沢 恵美子 教授】

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