看護学科コラム

202105.28
看護学科コラム

【看護学科】『 看護職はグローバルな専門職である 』

新型コロナウイルスの感染拡大は留まることを知らず、皆様におかれましては昨年から、数多くの生活上の制約や変容を迫られ、我慢の日々を送ってきたことと想像いたします。日々頑張っている皆様に、心より感謝を申し上げます。

さて、今回は看護職の役割や専門性についてグローバルな視点から考えていきたいと思います。

看護専門職には、国際的な看護専門職団体として、100年以上の歴史を持つ国際看護師協会(International Council of Nurses: ICN)という団体があります。日本の看護職の専門職団体である日本看護協会もICNに加盟をしています。
ICNでの看護の倫理綱領(専門職団体が,専門職としての社会的責任,職業倫理を行動規範として成文化したもの)の前文の中には、次のようなくだりがあります。
「看護ケアは、年齢、皮膚の色、信条、文化、障害や疾病、ジェンダー、性的指向、国籍、政治、人種、社会的地位を尊重するものであり、これらを理由に制約されるものではない※1」この前文からは、看護ケアの対象は世界のすべての人であり、看護には国境はないこと、看護職はグローバルな専門職であるということを読み取ることができると思います。

nurse.jpg

昔の話で恐縮ですが、私は今から約20年前、青年海外協力隊員として南太平洋のバヌアツ共和国(以下バヌアツとする)で、保健師隊員として2年間現地の看護職と共に活動しました。主な活動は母子保健活動(巡回と固定の母子保健クリニックでの乳幼児の健康チェックやワクチン接種)、学校保健活動(小学校を巡回しての健康教育の実施など)でした。

活動をとおして看護職の専門性について学んだこと、感じたことが大きく2つありました。

world_people_circle.png

1つは、人々の文化や価値観は多種多様であり、看護を提供する際にはそれらの多様性を受け入れ、理解することが重要であるということです。
国が違えば、使う言語が異なるだけではなく、文化や価値観も大きく異なるということを肌で感じました。「こうあるべき」「こうするべき」という考えは、自分の価値観でしかなかったということに気づきました。


2つ目に感じたことは、看護の専門性は万国共通であるということです。バヌアツで活動する中で、国が違っても予防活動に必要な視点や予防活動を行うための健康教育の技術の基本や原理・原則は同じであることを感じました。
現地のお母さんや子どもたちが理解しやすいような指導案づくりや健康教育で使用するポスターの作成には、保健師の基礎教育で学んだことや日本での保健師としての活動経験が生かされました。保健師の予防活動は日本だけではなく海外でも通用するということを実感し、看護の知識や技は万国共通であることを感じました。

nurse_benkyou_woman.png

私自身はバヌアツでの活動を通して、グローバルな看護の視点について学びました。しかし、グローバルな看護の視点は国外における活動に限定して必要な視点ではなく、国内の活動においても必要であるといえます。日本においては近年、在留外国人が増加しており、国内の中でも人種が異なる対象者へ看護を提供する機会が増えています。また、現在の新型コロナウイルスの感染拡大は世界共通の健康課題であり、その解決のためには、グローバルな視点でこの課題について考え、世界の看護職の一員として課題解決のために立ち向かう姿勢が必要であるといえます。
世界のどこで活動しようと、地球市民の一員として健康課題に立ち向かうことには変わりありません。そのように考えてみると、看護にはそもそも国境というものは存在しないこと、看護職はグローバルな専門職であるということが理解できるかと思います。看護職の活動の場や役割はますます広がっています。グローバル看護専攻がある本学で皆様と一緒に看護について学ぶことができることを楽しみにしています。


※1 日本看護協会:日本語訳ICN 看護師の倫理綱領(2012 年版)2013 年7月 公益社団法人日本看護協会訳https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/rinri/icncodejapanese.pdf

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE
  • Twitter