看護学科コラム

202109.10
看護学科コラム

【看護学科】人工呼吸器(レスピレーター)の合併症と限界

胸の中(胸腔内)は-8㎝/H2Oで大気圧に比べ圧が低く(陰圧)なっています。

自然な呼吸は、主に肺とおなかの境の膜(横隔膜)が足側に引っ張られしぼんだ風船(肺)を引っ張って広げ、その風船の中に自然に空気が入ってきて息を吸っています(陰圧呼吸)。

しかし、人工呼吸器(レスピレーター)を付けて呼吸する時は、しぼんでいる風船(肺)に器械で空気を押し込んで(加圧して)息を吸い、一定量の空気が風船(肺)に入ったところで押し込むのをやめて口から息が出ていくようにして呼吸(陽圧呼吸)をします。


人工呼吸器をつけて呼吸を行うと、機械で空気を肺に押し入れるため(陽圧換気)、高い圧の空気が肺や肺胞に入り肺が膨らみすぎたり肺胞の破裂(圧外傷)が起こり、空気が肺のまわりに漏れ出して肺が空気によって圧迫され(気胸)息が吸いにくくなることや、機械によって肺が大きくふくらみ過ぎて肺と肺の間にある心臓が圧迫され心臓から送り出す血液が少なくなり血圧が低くなったり(血圧低下)、尿が少なくなったりすること(尿量減少)がまれにあります。これらの対策としては、押し入れる空気の量(1回換気量)を減らしたりします。

高い濃度の酸素を肺に押し入れ換気(陽圧呼吸)している場合は、血液中の酸素が多く二酸化炭素が少なくなり血液がアルカリ性(アルカローシス)に傾き、pH7.47以上になると不整脈や心臓が押し出す血液が少なく(心拍出量低下)なったり、けいれんをおこすことがあります。


人工呼吸器をつけるために気管にチュープを入れて(気管挿管)いるのでそこから感染し、肺炎(人口呼吸器関連肺炎:VAP)を起こす危険も出てきます。これらの人工呼吸管理による合併症を起こさないために、人工呼吸器をつける時間が長引かないよう看護するする必要があります。


また、重症な呼吸不全の肺では人工呼吸器を使って空気を入れても、肺そのものがが充分酸素を取り込み二酸化炭素を排出(ガス交換)できなくなるという限界があります。

人工呼吸器は主に酸素を取り込み(酸素化)、換気を維持・改善したり、呼吸にかかる負担(呼吸仕事量)を軽減するために使われます。合併症を起こさないよう予防的なケアを心掛けましょう。

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保健医療学部 看護学科 高見沢 恵美子

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