看護学科コラム

202111.18
看護学科コラム

【看護学科】不妊予防(前編) ―自分の妊孕性を知りライフプランを考える―

不妊女性への看護は、女性が不妊を認識して受診してからスタートしますが、広い意味での不妊への支援は、男女が二次性徴を迎えてそれぞれの身体に向き合う思春期教育からスタートすると言えます。そして、成熟期になったら、男女の妊孕性を高めるための支援が必要になり、年齢が高まることにより生殖能力には限界があることを認識し、妊娠可能な時期に子どもを産む選択ができる様に、ライフプランを支援することが必要になります。

 
社会的・医学的にみて女性の妊娠に適した年齢は「25歳から35歳」と言われています。

妊娠・出産は女性の身体の中で起きる生理的現象であり、女性の体内で栄養を供給されて胎児は育っていきます。0.1㎜の受精卵が3,000gにまで成長することを考えると、女性の身体的負担は大きく、医療者は、女性がその負担に耐えられる時期に出産することが大切であることを伝えていくことが求められます。

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妊孕性の高い時期に妊娠・出産の計画を
妊娠・出産に適した時期はみずみずしい原子卵胞が活発に発育している時期で、この時期は授精し易く、受精後も着床し易い時期といえます。この時期の女性は、自分の身体を知り、管理していく能力を身に付ける必要があります。

まず、月経の自己管理能力を身につけましょう。
自分の身体に向き合うために基礎体温を測定して月経記録をつけましょう。先月の自分の月経はいつから始まり、いつ終わったか覚えていますか?
自分の月経周期(月経の始まった日から数えて次の月経の前日まで)や卵巣機能を理解するために基礎体温を測定します。基礎体温の変化から妊娠し易い時期で避妊が必要な時期や、避妊しなくても妊娠しにくい時期を知ることができます。基礎体温の変化から、現在の自分の卵巣機能を知ることができます。今日は妊娠し易い日か・しにくい日かを知り、望まない妊娠を防ぐことにも繋がります。

月経中は子宮内膜が剝がれている状態です。性器を清潔にして、無理しない生活をしましょう。

月経前症候群や月経困難症がある人は、その対処法として、身体を冷やさないことや、時には月経困難症を軽減する内服薬の服用が必要なこともあるので、婦人科を受診して相談しましょう。

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出産の適齢期

結婚に適齢期はありませんが、出産には適切な時期があります。

女性の身体の中の卵巣には、原子卵胞が蓄積されています。それは胎児期には約200万個ありますが、思春期の中学生頃になると約40万個にまで減少しています。

思春期になると原子卵胞は、女性ホルモンの影響で成熟して約2㎝の大きさになると、毎月1個ずつ排卵されます。同時に多くの原子卵胞は少しずつ死滅していき、37歳頃になると約1万以下になり、形もいびつになり、受精能力が低下し、妊娠しにくくなります(図)。

その意味から妊娠・出産を希望するならば、35歳くらいまでに計画するのが適切な時期といえます。 

中学生に自分のライフプランを考えさせると、20歳代前半で結婚し、後半までに2名の子どもを出産するプランをたてる生徒が多いのですが、現在のわが国の平均初婚年齢は、女性29歳、男性31歳で、第1子の平均出産年齢は30歳になっています。

女性が自分の人生のプランの中で、妊娠しやすい時期に出産計画を立てる事ができるような社会になるような政策が求められます。

保健医療学部 看護学科 教授 齋藤 益子

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