社会学科ニュース

202111.24
社会学科ニュース

【社会学部】宇治川音楽祭は逆風に負けないっ!

10月10日(日)、大学の近くにある宇治川商店街で音楽祭が開催され、社会学科の1年生13人がスタッフとして参加しました。

 

この音楽祭は7年前に始まったものです。商店街の音楽祭と聞いて想像するような素人のど自慢のようなものではなく、聞けば誰でも名前を知っているメジャーなアーティストやメジャーデビュー前のインディーズバンド、ダンスユニット、ローカルアイドル、若手芸人など、かなり尖った出演者が集まります。ステージはひとつでは足りず、山側と海側に二つのメインステージ、そのほか空き店舗を利用したミニステージを各所に設置。西元町駅前の商店街が朝から晩まで大勢の観客で埋め尽くされます。

 

そして驚くべきはこれだけのイベントを、イベント会社などを入れることなく、商店街やその近所に住む若い人たちだけですべて準備しているという点です。商店街にある音楽好きが集まるバーでの雑談からはじまったというこの音楽祭、アーティストへの出演依頼や、フライヤーやグッズのデザイン、ウェブ上での宣伝なども含めて「自分たちでやっている」あるいは「知り合いをみつけてやっている」とこともなげに言うのですが、どうみてもプロの仕事のクオリティ。おそらくはこの人の輪の起点となる商店街に、並外れた才能と情熱の持ち主たちが生まれ合わせてしまったということなのでしょう。こんな商店街って、ちょっと他にはないんじゃないでしょうか。

 

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そんな宇治川商店街ですが、新型コロナウィルス流行の影響はやはりきつかったようです。

 

神戸市内の地域イベントがことごとく中止されていく中、昨年の宇治川音楽祭は、二重三重の感染対策を取りながら、それでもなんとか実施。出演したアーティストたちからは「活動の場を与えてくれて本当にありがたい」という声があがっていました。
 

そして今年。今年も昨年以上の感染対策を取りながら実施する方向で動いていたのですが、8月下旬に愛知県でおこなわれた野外音楽フェスが感染対策のまずさでマスコミから大批判を受けたこともあり、音楽イベントにはすさまじい逆風が吹きまくりました。

 

実施まで1か月となった9月上旬、宇治川音楽祭は「無観客開催」の決断を下します。商店街に設置したステージでライブをおこなってもらう、しかし観客は入れず、ネットでの配信のみとするという決断です。言い換えれば「それでも中止はしないんだ!」という決断です。

 

社会学科の1年生たちが参加したのは、こうした特殊な状況での音楽祭でした。

ステージ両翼の歩道で通行人が立ち止まってしまうと無観客にならないので、立ち止まっている人がいたら注意をうながすという仕事を、ローテーションを組みながら夜8時までおこないました。
 

仕事自体はそれほど忙しくはなく、後日もらった感想では、むしろ間近で見たライブの印象の方がより強烈だったようです。

「思っていた以上に迫力があり、驚かされた。また、曲も盛り上がる曲ばっかりで、気づいたら手拍子をしたり、スマホで撮影していました。」
「とても面白かった。演者の方のパフォーマンスや熱意に感動した。」
「受け身がちでは出会えないような素敵なバンドに出会えた。」
「様々なすごいアーティストの方々がいて感動した。」

 

また、裏方として働く商店街の人たちの手際の良さや熱意、真剣さも印象的だったようです。

「実際に会場に行って地域活性化のために出演者、ボランティア、商店街の方々などが一丸となっているのを目の当たりし、本当に多くの人の協力があり宇治川音楽祭が成り立っているんだなと実感した。」
「オンライン故の無観客だった会場では多くの人が宇治川音楽祭を成功させるため、盛り上げるために動いていたのが印象的でした。今回のボランティアは仕事は少なかったのですが、それでもこの様な裏での努力がイベントを盛り上げる上で重要なのだろうな、と思いました。」

 

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こうした現場で得た印象は「もっと知りたいこと」のタネになります。

たとえば今回のアーティストたちは、

それぞれ商店街の誰が、どんなつてで出演依頼を取り付けたのでしょうか?

これだけの音楽祭を実行した「実行委員会」には、どんな人が参加していて、それぞれどんな仕事を担当したのでしょうか?

商店街といえば、おそらく年配の人たちからなる「組合」もあるでしょうが、若手の実行委員会とは対立したりしてないのでしょうか?

無観客開催の決定に至るまで、どのような意見と議論があったのでしょうか?

予算はいくらで、どう確保したのでしょうか?

他の地域イベントのようにイベント会社に丸投げしたりせず、あくまで自分たちで音楽祭を実施することには、何か強い思いがあるのでしょうか?

コロナ禍でほとんどのイベントが中止される中、なぜ宇治川音楽祭は逆風に立ち向かおうとしたのでしょうか?

 

この授業は「サービスラーニング」といいますが、地域での「サービス(奉仕活動)」はきっかけです。現場で人と関わることでしか見つけられない「もっと知りたいこと」、それを見つけるためのきっかけです。
 

いま授業は、みんなが現場で見つけてきた「もっと知りたいこと」や、日本各地の地域活性化の事例と宇治川商店街の現場にあったものを比べることで見えてくる「もっと知りたいこと」、それらを寄せ集め、整理をしている最中です。
 

これら「もっと知りたいこと」のカタマリは、11月の末、音楽祭の実行委員長にインタビューでぶつけます。学生たちによるこのインタビュー、そしてインタビュー結果のまとめとウェブ発信がこの授業のヤマ場。サービスラーニングの「ラーニング」(学び)の部分になります。
 

ウェブ発信の準備が整ったら、またこのコラムで紹介させてください。

 

社会学部 社会学科 准教授 行木 敬
⇒ 社会学部ページ

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