看護学科コラム

202112.01
看護学科コラム

【看護学科】看護と難民支援(国内編)

2020年末時点で、世界には紛争や迫害により故郷を追われた人の数は約8,240万人いると国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)は報告しています。


難民というと、どこか遠い国の難民キャンプで過ごす人々を思い浮かべるかもしれません。しかし、日本にも難民としてきた人たちがたくさんいます。東京2020オリンピックでサッカーチームの代表として来日したミャンマーの選手が難民認定申請をしたことはニュースにもなりました。


日本での難民認定申請数は2017年がピークで19,628件でしたが、難民認定された人は20人で約0.1%でした。それまで申請数は増加傾向にあったのですが、2018年以降減少を続け2020年では3,936件の申請に対し、約1%の40人が認定されました。他の先進国に比べてかなり少ない状況といえます。

認定の結果には何年もかかりますので、その間は様々な制約の中で暮らさなければなりません。申請者の国籍は67か国にわたり、主な国籍はトルコ・ミャンマー・ネパール・カンボジア・スリランカとなっています。


来日直後は、着の身着のままで十分なお金も持ち合わせがなく、言葉は通じず、住む家もありません。彼らは日本のどこでどのように暮らしているのでしょう?いろいろな支援を通じ、一人で生活していく人もいますし、民族でコミュニティを作って暮らしている人もいます。いずれにせよ、言葉や文化が違う日本の中で少なからず"生きにくさ"があるのです。


健康保険に加入していなかったり、コミュニケーションの問題もあって医療機関を活用する機会が少ないようです。母国での過酷な経験がトラウマとなっている人もいます。看護として関わることとして、定期的なヘルスチェックや健康相談、予防のための健康教育などがあります。また、心の問題についてはしかるべき専門のボランティアに紹介することもあります。その前に人間関係を構築することが大切ですので、彼らのコミュニティの中に入っていき、日本語の勉強を一緒にしたり、文化を共有したり話をよく聞くようにします。

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保健医療学部 看護学科 教授 伊藤 尚子

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