看護学科コラム

202112.03
看護学科コラム

【看護学科】不妊予防(後編) ―女性の身体に優しい生活―

女性の身体を守り、妊孕性の低下を防ぐ女性の身体に優しい生活とはどんな生活でしょうか。


女性の身体の中で新しい命は育っていきます。胎児の成長・発達のための栄養素は、全て女性の血と肉のもとになっている栄養素から吸収されます。つまり、母親が口から入れた食べ物がそのまま胎児の身体を作る材料になっているのですから、次世代を産みだす女性の身体は大変貴重な存在なのです。


母親の身体に蓄積された栄養素を胎児は取り込んでいきますから、母親が摂取しなければ、母親の身体は不足状態になり、タンパク質、カルシュームなどが不足すると、骨はボロボロ、歯が抜けることになり、貧血になることもあります。自分の身体は自分だけのものではないと考えた食事を心がける必要があります。

卵巣に優しい生活のすすめ

  • 身体を冷やさない・・・卵巣が体内にあるのは冷やさないため、その逆で男性の精巣は温めないために体外にあります。
  • タバコを吸わない・・・たばこは習慣性があり、思春期に好奇心から吸い始めるとやめられなくなります。
  • 早寝・早起き・・・・・早起きして太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされます。
  • 月経困難症の治療・・・月経時やその前後の痛みや不定愁訴は治療しましょう。
  • 子宮内膜症の治療・・・子宮内膜症などの性器疾患は確実に診断をうけましょう。
  • 卵巣を休ませる・・・・妊娠期間は排卵がありません。排卵で卵巣は傷つきます。ピルの服用も卵巣を休ませます。

喫煙・飲酒などの制限
喫煙や飲酒は母体の妊孕性を低下させます。喫煙は習慣性があり、若いころに喫煙習慣がつくと中々やめられなくなります。また、妊婦の喫煙や飲酒は胎児の成長に大きく影響します。胎児性アルコール症候群で出生時からハンディを負わせることにもなりかねません。

妊娠期の女性の喫煙・飲酒の制限は必須ですが、若いときから女性の身体への影響を考慮して、禁煙し、飲酒も適量に留めたいものです。知らないうちに覚せい剤を飲用していつの間にか常習犯になっているなどはとんでもないことで「一度、経験してみたかった」などという理由で手を出すと、後に引けなくなるので、厳重に注意しましよぅ。

 

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健康な生活習慣
睡眠・休息・食事など毎日の生活を規則正しく、女性の身体に優しい生活をこころがけましょう。睡眠と休息はストレスを軽減し、食事は血と肉となり、抵抗力を高め、体力をつけるものです。
インスタント食品は少なくし、自然食で野菜を多く、ビタミンやミネラルを多く含んだ食事にします。過食や偏食、減量のための無理なダイエットなど度が過ぎると月経障害になり、卵巣機能の低下を来します。睡眠は健康の維持に重要です。睡眠中に日中の無理した細胞はリセットされ、新しい力を蓄えて次の日がスタートします。睡眠不足状態が続くと、自立神経が不調をきたし、めまい、耳鳴りなどの不定愁訴を訴えるようになります。

健康維持のための睡眠時間は、10歳代1日8時間、20歳代では最低7時間と言われています。長期の睡眠不足状態にならない様に生活をコントロールしましょう。
運動は、週3回、1時間程度ともいわれます。時に有酸素運動をすることで、心身の鍛錬になり、高血圧・高血糖など成人病の予防にも繋がります。ジョキングや水泳などは効果的です。

 
性感染症や子宮内膜症など性器疾患の予防
性感染症や性器疾患は妊孕性の低下を来します。不妊症になって初めて性感染症に罹患していたことがわかるケースも見られます。無防備な性交により、知らないうちにクラミジア感染症に罹患していて、卵巣や卵管まで炎症していて、不妊症になるケースもあるのです。
また、妊娠しても、性感染症によっては帝王切開が必要になるケースもあり、出産のリスクが高まります。 さらに希望しない妊娠のための人工妊娠中絶は、その後の不妊や胎盤の位置異常、出血の原因となることがあります。


心の健康とお互いを大切にする心
私たちはストレス社会の中で生きています。他人を傷つけても平気な人もいて、周りは不安とストレスがいっぱいです。明日はなにがあるかわからない中で、コロナの感染予防を意識した生活を余儀なくされ、すっかりそれが身に付きました。他人との距離を保った生活は、心の距離も遠くした様に思います。孤独感や淋しさなど心の健康が脅かされる状況もあります。ストレス解消のための工夫や趣味の時間をもち、心の健康の維持にも注意したいものです。


いつかは結婚し出産すると思いつつ、それを先送りしている若者たち、明日はどうなるかわからない不安定な社会、言えることは今を大切に、そして明日に希望をもって、生き生きと生きて行くことです。女性が、子どもが欲しいと思った時に妊娠・出産しやすい社会、ライフワークバランスへの支援を強化する必要があります。


保健医療学部 看護学科 教授 齋藤 益子

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