心理学科コラム

202203.23
心理学科コラム

【心理学部】捜査に思い込みは禁物

思い込みは捜査を惑わします。(捜査を間違った方向に導く)

「高橋医院」という開業医があるとします。また「高橋病院」という総合病院もあるとします。

ある捜査官が事件の目撃者から、被疑者が「高橋医院」に通院していたのではとの情報を聞き込みました。

ところがその捜査官が一般的な表現である「病院」という言葉に引っ張られ、本来の聞き込みの情報は「高橋医院」であるのに「高橋病院」と無意識に思い込み、捜査の責任者に報告する時に、「『高橋病院』に被疑者は通院していました」と報告してしまいます。当然捜査責任者は「高橋病院」に対して各種捜査を実施しますが、もちろん被疑者につながる情報は出てきません。

クイズのようですが、捜査責任者が「病院」ではなく「医院」ではないかと気づけばいいのですが、責任者をはじめ捜査員が気づかなければ当然結果は出ません。

また、捜査対象を広げ「医院」に対しても捜査すれば結果は出てくるものの時間と人員を無駄に費やしてしまいます。

端的な例ですが、単なる言葉の思い込みが捜査を間違った方向に導いてしまうのです。

この思い込みが犯罪事実にかかる事件の発生時間や発生場所であれば、この事件は永遠に解決を見ないかも知れません。言葉、単語一つをとっても情報を正確に伝達することの難しさがわかると思います。そのため、捜査員は出来る限り複数で事情聴取等の捜査に当たります。複数の目と耳で確認し、事実を見誤ることがないように努めるのです。

捜査した内容は必ず捜査報告書や供述調書等と呼ばれる書類にします。

当然ながら、目や耳で獲得した情報を正しく文字情報に変換していくことは言うまでもありません。

上記の例は、人間によるヒューマンエラーですが、そのエラーをなくすため、今回の例で言えば「思い込み」を心理学的に学ぶことによって、その防止策のヒントをつかむことができるかも知れません。

【心理学部心理学科 教授 髙橋 浩樹】

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE
  • Twitter