
心理学科コラム
【心理学部】マスクは顔を魅力的にするのか(専門演習Ⅰ/Ⅱ)
マスクを外した人を見たときに「あ」となった経験はないでしょうか。
最近はマスクを着けて生活することが一般的になりました。日常的にマスクをしているため、マスクをした顔しか見たことがない知人も増えたと思います。
そんなマスク姿しか知らない知人がマスクを外したとき「あ、こんな顔だったのか」と思った経験がある人もいるのではないでしょうか?
「あ、こんな顔だったのか」という経験は、想定より『良かった』と『悪かった』の両方があると思います。マスク美人という言葉もあるそうですが、どんな顔の人がマスクを外すと想定より『良かった(悪かった)』という変化が生じるのでしょうか?
今回は、もともとの顔の魅力度が、マスクを外した時に感じる変化に関係すると考えて検討を行いました。
具体的には顔の魅力度が低い人は、マスクを外すと想定より悪いと感じ、顔の魅力度が高い人はマスクを外すと想定より良いと感じるということです。
実際の実験では、魅力的である顔と魅力的ではない顔を選び※、マスクで隠れる部分を取り除いた顔を作り、参加者にそれぞれ魅力度を判断してもらいました。実験への参加者には、まず顔の下半分が見えない画像を見てもらい魅力度を評価してもらいました。そのあと、顔全体が見える顔を見せ魅力度を評価してもらいました。
実験の結果は概ね一致しており、魅力的でない顔は下半分が見えない時の方が魅力的に判断され、魅力的な顔は下半分が見えない時の方が魅力的ではないと判断されました。つまり、顔全体が魅力的でない場合はマスクをしている時の方が魅力的に見え、顔全体が魅力的な場合はマスクをしている時の方が魅力的に見えないということです。
先行研究では、魅力的な顔はマスク(やノートなど)で顔の下半分を隠すと魅力的ではなくなること、逆に魅力的でない顔は下半分を隠すと魅力的になることが示されています(Miyazaki, Kawahara, 2016)。今回の研究は事前に上半分の顔をみて(魅力度を判断して)から、マスクを外した顔を見て魅力度の判断をしてもらっている点が少し異なります。しかし、マスクによって魅力度の判断が異なることと、その方向は今回の研究と先行研究で一致していそうです。さらにもうひとつわかることは、マスクをしている顔を見たときに想像する(マスクを外した)顔の全体像は、魅力的ではない顔よりも魅力的だけれども、魅力的な顔ほど魅力的ではない可能性があるということです。




※ 実在しない顔を作成するWebサイト This Person Does Not Exist で顔画像を作成し実験刺激として収集した。
引用文献
Miyazaki, Yuki & Kawahara, Jun-ichiro. The sanitary-mask effect on perceived facial attractiveness. Japanese Psychological Research. 2016, 58(3), pp.261-272.
人間心理学部 生田俊毅・石井立樹・大原直也・福井悠記
アドバイザー 富田瑛智