グローバルコミュニケーション学科コラム

202204.18
グローバルコミュニケーション学科コラム

【Gコミ学科】フィンランドGlobal Teacher Program活動報告

Global Teacher Program (以下GTP)とは、株式会社Stapiaが現地組織と協力して実施している海外の公立小学校で教育実習ができる留学プログラムで、フィリピン(セブ島)・フィンランド(北サヴォ県)、アメリカ(ハワイ)の3拠点で2016年から始動し、累計200名以上の学生が参加しています。

フィンランドGTPでは、現地の公立小学校や中学校、専門学校などを見学したり、先生や生徒と交流をしたりします。プログラムの最後には公立小学校で「日本文化」をテーマに英語で授業を行います。(GTPプログラム

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新型コロナウイルスの発生以降、フィンランドへの渡航が難しいため、2021年度はオンラインで実施をいたしました。

大まかなプログラムの流れは、以下の通りです。

  1. 事前学習:フィンランド教育や文化の講義
  2. 授業準備:授業の指導案やスクリプトを作り、模擬授業を行う
  3. 授業実践:2グループに分かれて、小学生向けに1回ずつ授業を実施
  4. 教育リサーチ:日本とフィンランドの教育に関わる現状の調査、課題分析
  5. ゲスト講義:フィンランド大学院生によるゲスト講義
  6. 最終プレゼン:「フィンランドの教育を学んだ上で日本の教育に活かせること」

<事前学習>

初回の授業では、まず全員の自己紹介やプログラムのオリエンテーションを実施しました。その後クイズなども交えつつ、フィンランドの地理や教育システムなどについての学習を行いました。

ちなみにこのクイズの答えですが、フィンランドの公用語は「フィンランド語」と「スウェーデン語」の2つです。実は英語は公用語ではないのですが、それでも英語が流暢な人が非常に多いのです。

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<授業準備>

グループごとに以下のような授業テーマを設定しました。

  • 日本の"昔の遊び"について
  • 日本の"冬"について

授業の指導案を作ったり、スクリプトを作ったり、パワーポイントで資料を作ったりと準備をしていきます。
模擬授業は複数回に渡って行い、講師もフィードバックを行います。1回目の模擬授業は日本語でも可能。2回目からは英語で授業というように、段階的に準備を進めてました。

<授業実践>

今回の実習相手は、フィンランドの公立小学校の5年生。Zoomを使った非対面形式の授業でも少しでも伝わりやすくなるように動画やクイズも取り入れたパワーポイントを作成したり、デモンストレーションを行ったり。各チーム様々な工夫をして授業が行われました。

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例えば、こちらのチームでは「日本の書初め」についてクイズ形式でレクチャーしつつ、実際にzoom越しに書道の実演を行いました。フィンランドは非常に肖像権が厳しく、子供たちの表情はネット上には公開できません。しかし、一画一画ゆっくりと力強く、丁寧に書かれる日本の書道に、フィンランドの子供たちの視線は画面に釘付けとなっておりました。

授業後には振り返りも行います。まずは自分たちでセルフフィードバックを行い、その後講師や教授からもフィードバックが行われます。
授業の時間配分や、間の取り方、zoomでの授業特有のアプリケーションの扱い方などさまざまな側面から1時間以上の時間をかけて細かく振り返ります。

<教育リサーチ>

授業を実施して終わりというわけではなく、フィンランドと日本の教育について比較を交えながら、良い点も課題点も含めてリサーチを行います。

講師陣からの講義に加えて、学生たち自身もインターネットや書籍を活用しつつ学習を進めます。また次に紹介するように、フィンランド人ゲストによる講義や質疑応答の時間も取っています。

<ゲスト講義>

フィンランド出身で現在は北海道大学大学院で、アジアの文化や宗教について研究を行なっているJuliana Porkkalaさんをゲストに、フィンランドの教育や文化についてお話しをいただきました。

特に印象的であったのは「フィンランドのいじめ防止プログラムの"Kiva Koulu"」についてです。フィンランドの学校現場では、いじめ防止が重視されており、フィンランドのトゥルク大学の教授たちが開発したいじめ対策プログラムを、国としても非常に多くの学校で実施しています。Kiva Kouluは国際的にも評価をされており一部のヨーロッパ諸国でも導入がされているそうですが、一方でフィンランドの学校でも完全にいじめがないといわけではないそうです。実際に起こったいじめが原因の事件など、最新の新聞記事なども紹介されました。

フィンランド教育は、決して完全無欠というわけではないが、現在進行形で様々な工夫がなされているという、非常にリアルなお話をしていただきました。

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<最終プレゼン>

最後の授業では集大成として「フィンランドの教育を学んだ上で日本の教育に活かせること」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

例えば、日本とフィンランドの1クラスの人数を比較して、少人数学級の導入について取り組んだ学生がいたのですが、数値データと実際にフィンランドの小学生に授業をした感覚など、複数の視点をもとにした発表がなされました。

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ちなみに、今回実習を行わせていただいた小学校の1クラスの人数は15名程度です。少人数学級には様々なメリットが期待されますが、一方多額の予算が必要な施作ではあるため、導入は容易ではありません。海外の事例をなんでも導入すればいいというわけではありませんが、少なくともこのように「データと経験の両方を元に比較を行うこと」で、自分なりの意見と根拠を持てるきっかけとなることを願って、このGTPを続けています。

国際コミュニケーション学部 清水拓野
株式会社Stapia 平岡慎也、地下智隆

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