グローバルコミュニケーション学科コラム

202207.01
グローバルコミュニケーション学科コラム

【Gコミ学科】リスニングは重要:その1

「英語を話せるようになりたい」という日本人はたくさんいます。その気持ちはとてもよく分かるのですが、その前にすべきことが、音声インプットとしてのリスニングです。

一方的に話すのであれば、話す練習をすれば事は済みます。例えば、スピーチやプレゼンなどがそうです。しかし、通常は「聞く・話す」を相互に行う「やりとり」なので、相手の言っていることが理解できなければ応答できず、会話も進みません。

リスニングは、先ず聞こえてきた音声を、頭の中に蓄積している英語の音声と一致させる作業から始まります。知らない外国語は、音としては聞こえますが、何を言っているのか、意味はさっぱり理解できません。単語毎に分けて書く「書きことば」とは異なり、英語の音声の特徴は、語連続の中で音声が変化します。2〜3の語が1つのかたまりになったり、子音が発音されずに消えたりします。

例えば、I asked him a question.を発音すると、文強勢はaskedとquestionの2語だけに置かれハッキリと聞こえます。しかし、それ以外の語は弱められて音声が変化します。himの/h/は脱落して、askedとつながり、後のaもhimにつながります。つまり、1拍目はI asked him aが1つのかたまりに、2拍目はquestionになります。あえてカナ書きすると、1拍目は「アイスクティマ」と発音されます。himの/h/が脱落や連結することを知らず、/him/と発音されると思っていると、何度聞いてもここにhimがあると気づかないでしょう。

聞こえてきた音が、自分の脳内に持っている音と一致させることができると、次はこの音に文法構造の分析が行われ、さらにそこに意味が付与されて、文の意味を理解する事につながります(途中の複雑な段階は省いて説明しています)。つまり、頭の中に英語の変化する音を蓄積する必要があり、それはこのような発音を練習して、身に付けることで可能になります。このような聞き取りにくい発音を弱形(weak forms)と呼んでおり、リスニングの上達には不可欠の要素です。これらの語は機能語と呼ばれ、冠詞・前置詞・接続詞・人称代名詞・助動詞など意味的にはあまり重要でない語のグループです。しかも、そのほとんどは中学校で習う基本語彙ですが、弱形の発音は習っていません。文字で見ると簡単な語ですが、音で聞くと難しいと感じるでしょう。

また、単語にしても、綴り字ではなく音で覚えておかないと、リスニングでは役に立ちません。ここでも、単語を発音して覚えることが求められます。重要な語は強勢を置いて発音するので、明瞭に聞こえます。一方、弱形の語は弱く曖昧に発音され、音声変化するので、聴き取りは厄介です。

日本語は、1つ1つの音は、すべて同じ時間をかけて明瞭に発音されます。一方、英語は強勢拍リズムを用いるので、発音に強弱のリズムがあり、単語の数が増えても強勢の数が拍数になるので、文が長くなっても日本語のように発する時間が長くなる訳ではありません。日本語の感覚で英語を聞こうとしても、曖昧で弱い発音や、消える音・つながる音があるので、聞き取れなくなります。

例えば、Cats eat meat.は、すべての語に強勢が置かれるので3拍になります。以下、語を増やしますが、すべて弱形(弱拍)なので、どの文も同じ3拍で発音されます(=どの文も同じ時間で発音)。

The cats / eat / meat. → The cats / will eat the / meat. → The cats / will have eaten / the meat.

一方、これらの英文を日本語のリズムで読むと、語が増えるだけ読む時間は長く伸びてしまいます。英語の歌を歌った時、楽譜が終わっているのに、歌詞がまだ残っているという経験はありませんか?英語のリズムと日本語のリズムには、このような違いがあるからです。

<その2へ続く>

【教授 有本 純】

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