心理学科コラム

202209.07
心理学科コラム

【心理学部】『取調べ』①

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皆さんは「取調べ」と聞いて何をイメージしますか。

―「かつ丼」それとも「卓上の電球式の電気スタンドを犯人の顔に近づける姿」―

これらのイメージこそサイバー的に言えば「フェイク」と言うことになります。

通常取調室の机の上には卓上の電気スタンドはありません。

机があるのみで何も置いていないのです。机は事務机ですが、引き出しの中はほとんど空っぽです。あったとしてもA4の白紙があるぐらいのものです。鉛筆やボールペンの筆記具もありません。なぜかと言いますと、電気スタンドや筆記具は時として凶器になり得るからです。

鉛筆やボールペンで被疑者(犯人)が取調べをしている捜査官の目や手を突くことが出来ます。

電気スタンドで殴り掛かることもできます。そのため取調べのために使うコンピュータや用紙、筆記具等はすべて取調官が取調べの都度持ち込み、被疑者が供述調書の署名をするときに使うボールペンはその時に捜査官が被疑者に手渡し、署名後必ず回収します。 取調べが終了して取調室を出る時には、持ち込んだものを確実に確認し、持ち出すとともに机の中に何も残っていないか確認します。

その上、勤務終了後や、朝の掃除の際に別の警察官が何も残されていないことを確認します。時には上司が取調室の点検を行います。

取調室で被疑者が食事をすることはありません。 いわゆる規則で禁止されています。

もし取調室で食事を与えたり、おやつを食べさせたというようなことがあれば、それは取調官が被疑者から自分に有利な供述を引き出すため被疑者に利益を与えたということになり、その時に得られた供述は証拠として使えなくなります。そして、その時以外にも同様の利益供与がなされたと疑われ、それまでの取調べも水の泡になります。

ある一定の罪を犯した被疑者は録音録画と言って取調室でのすべての言動が録画され、その録画記録が裁判を進めていく上での証拠となることもあります。

取調べは真剣勝負であると以前のコラムにも書きましたが、その真剣勝負を行う際には、色々と決められたルールをしっかりと守り、フェアーな状態で勝負を進めていく必要があるのです。

今回はテレビドラマが作り出した取調べの古典的なイメージを払拭してもらえるよう、取調べ環境のことについて書きました。

【教授 髙橋 浩樹】

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