心理学科コラム

202304.18
心理学科コラム

【心理学部】横断歩道における小学生見守りは、大人の声のかけ方で行動が大きく変わる:サービスラーニング「見守り活動で小学生の行動は本当に変化する?」

4月になりました。早朝、ピッカピカのランドセルを背負った小学1年生が、ちょっと緊張した面持ちで登校している可愛らしい様子が日々見受けられます。ちなみに日本では、小学1年生になると、初めて保護者の手を離れ、一人で通学をするのが一般的ですよね。ですが、その通学の道すがらは、死角が多い交差点を通ったり、信号ルールを守る必要のある横断歩道を渡ったりしなければなりません。ついこの間まで幼稚園・保育園児だった小さな子どもが、急に一人ですべての危険を回避し、無事に登校できるのでしょうか?そんな心配から生まれたのが、大人による登下校の見守りです。いわゆる「旗振り」さんですね。皆さんも子どもの頃、横断歩道等で、大人が「気をつけてね」「いってらっしゃい」等の声掛けをしながら交通安全の旗を振って、登下校を見送ってくれた記憶があるのではないでしょうか?

ただ「気をつけてね」という大人の声がけで、小学生はより安全に行動してくれるようになるのでしょうか?実は、心理学において人の行動を変えるためには、より具体的な指示が重要だと言われています。(石川,2014, 八木・瓜生, 2018など)。例えば、小学生に手を挙げて横断歩道を横断させたいのであれば「気をつけてね」よりも「手を挙げて渡ってね」と伝えた方がより具体的といえるかもしれません。このサービスラーニングでは、小学生の見守りにおける具体的な指示の効果を実験にて検証しました。検証内容は次の通りです。

神戸市立こうべ小学校の通学路となっている横断歩道で、大学生が小学生の見守り活動を3回行いました。ただし毎回、小学生への声かけの内容が異なっていました。1回目は「気をつけてね」等の漠然とした声かけ、2回目は「手を挙げて渡ってね」等の具体的な声かけ、3回目は(1回目と同様に)「気をつけてね」等の漠然とした声かけを行いました。その結果、小学生の行動はグラフの通りになりました。縦軸は小学生が手を挙げて渡った確率を表しています。2回目が最も高くなっているのがわかると思います。つまり、2回目の具体的な声かけを行ったときに、小学生は一番手を挙げて横断歩道を渡ってくれたのです。この実験によって、心理学の知識は社会のために十分役立つという立派な証拠が示されたわけですね。

皆さんも、心理学で学んだことを大学内だけの知識に留めず、社会に出てからもたくさん役立てるように成長していってください。

旗振り実験1.png
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引用文献:

石川善樹 行動変容テクニックの標準化に関する国際的な動向について 行動医学研究 Vol.20(2), 46-46, 2014.

八木匡・瓜生原葉子 行動変容のメカニズムと政策的含意 行動経済学Vol. 12, 26‒36, 2018

【准教授 上田 真由子】

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