グローバルコミュニケーション学科コラム

202309.06
グローバルコミュニケーション学科コラム

【Gコミ学科】海の「かたち」を考えたことがありますか?―私の研究興味―

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 山や平野に「かたち」があるように、海にも「かたち」があるのを知っていますか?丸い海や四角い海なら誰もが思いつくかもしれません。でも、海の「かたち」はそれだけではないのです。「明るい」海、「暖かい」海、「危ない」海、「深い」海、「遠い」海、「戦い」の海、などなど。心象風景としてわたしたちの心に刻まれている海は、さまざまの「かたち」を持っています。

 例えば、淡路島と徳島県との間にひろがる海はどんな「かたち」をしているでしょう。肉眼ではっきり対岸の景色をとらえることができるこの海の「かたち」は、科学的に言えば「近い」「狭い」海かもしれません。でも、わたしたちの心に刻まれる鳴門の海は、潮の干満による大渦が巻く、「力強い」「怖い」海でもあります。対岸の浜に住む人や漁師にとっては、なかなか渡り切れない「遠い」海と昔は感じられたかもしれません。茫洋(ぼうよう)とひろがる水の空間は、見る者の気持ちしだいで、心の中で自在に伸び縮みし、青く輝きもすれば、灰色にくすみもする、私たちの気持ちを映し出す融通無碍(ゆうずうむげ)の心の鏡でもあるのです。

 それでは、同じ瀬戸内海の海を、外国の人が見たらどのように思うでしょう。美しいその多島海を、中国の人は箱庭のような海と思うかもしれませんし、フランスの人はエキゾチックな東洋を映し出す神秘の海と思うかもしれません。世界中のさまざまの海をいったい私たちはどのような気持ちで見つめ、時代ごとにどのような憧れや不安をそこに重ねてきたでしょう。小説や詩歌、絵画、映画、旅日記などに描かれた世界の海の「かたち」を味わいながら、海と人間の営みのひろがりを学ぶ。そんな研究を私は進めています。それはまた、人と自然のつながりに触れる心躍る研究でもあるのです。

【教授 遠藤 泰生】

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