観光学科コラム

202312.14
観光学科コラム

【観光学科】地下鉄サリン事件

12月に入り、ジングルベルが聞こえてくるとともに、今年を振り返る様々な特集がテレビで放送されている。今年も様々な事件や事故が発生したが、昨年の安倍元総理殺害事件によりクローズアップされた統一教会に関する報道などから、今年は宗教に関する問題がニュースで取り上げられた。

今から28年前の1995年3月20日に未曾有のテロ事件が発生した。東京都内を運行する営団地下鉄の各路線において、猛毒のサリンが散布された事件である。事件の首謀者と実行者はオウム真理教の教祖と信者であり、14人が犠牲者となり、通勤途上の多くの会社員が事件に巻き込まれ、約6300人が負傷した。

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当時、東京の豊洲に居住していた私は、霞が関にあるオフィスまで有楽町線に乗車し、有楽町で日比谷線に乗り換え、霞が関駅で降車し出社していた。事件当日の朝も有楽町駅まで到着し、日比谷線をホームで待っていたが、その日に限って全く電車が来る気配がなく、ホームは早朝のラッシュということもあり、みるみる人であふれかえった。そこで日比谷線から千代田線に変更し、霞が関駅まで向かうこととした。千代田線日比谷駅のホームに着くと、丁度車両がホームに滑り込んで来たこともあり、慌てて最後尾の車両に乗った。霞が関駅に到着し、降車してホームの先頭に向かって歩き始めたが、今度はその乗っていた車両が出発しない。「先頭車両の清掃のために停車しています」とアナウンスが流れた後、暫くしてその車両は出発した。千代田線霞が関駅のホームを改札に向けて歩いていた私は、先頭車両にあった何か汚物のようなものをホームで清掃している地下鉄係員の姿を横目でチラリと見た。

千代田線の改札を出ると、私が通常、乗車している日比谷線の改札からパニックになった乗客が地下鉄の外に向かって走り出ていく様子を目撃し「一体何があったのか?」と訝しながら、オフィスに向かった。

霞が関のオフィスに到着すると、その後、周辺は大変な騒ぎとなった。外は救急車のサイレンが鳴り響き、ヘリコプターが上空を飛び回り、オフィスには家族を心配する電話がひっきりなしにかかってきた。尚、千代田線霞が関駅のホームで清掃していた係員は、その後、この事件の犠牲者となった。

大学でリスクマネジメントに関する講義を担当しているが、その講義おいて社会にはリスクが必ず存在しており、何時そのリスクが顕在化するかわからない。リスクを出来る限り認知し、その顕在化を防ぐ手立てが必要であると教えているが、この事件のように予想を超える事態が発生することもあり、リスクを認知することの難しさを教えてくれる。

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