看護学科コラム

202403.21
看護学科コラム

【看護学科】助産師の卵たちと関わって

28歳から助産師教育に携わってきた。当初は年上の学生もいて、惑うこともあった。放課後は学生達とグループワークで一緒になって資料作りをしており、学生からの質問に立派に答えなければと焦り、緊張の連続であった。数年して、落ち着いて対応できるようになり、時には一緒に考え、一緒にテキストをめくり、時には最先端の知識を詰め込んでいる学生に、「どう習った?」と聞けるようになった。助産師という専門職を目指して頑張っている学生たちは主体的で自立しており、昼夜を問わない実習での関わりなどを通して、共に生活して共に考えることが多く、食事も共にする機会があり、卒業間際になると大きく成長した姿に感動の熱い想いが込み上げてくる。 

保助合同教育からスタートして、助産師専門学校、大学専攻科、大学学部教育、別科助産専攻、大学院助産専攻、そして最後に本学で学士課程の助産選択コースの学生と関わって来た。しかし、教育課程は異なっても、助産師に求められる資質は変わらず、教育目標も同じで、当然、国家試験も同じ出題基準で受験しなければならない。学士課程での実質的な授業時間は、専攻科や大学院に比較すると短く、大学の助産コースでは、約半分は読み込み科目となっている。短い授業時間の中で、演習も実習も分娩介助を中心にせざる得ない。また、この4年間はコロナ禍により、実習内容の制限も加わり、学ぶ環境として学生に十分な場を提供できなかったことは悔やまれる。保健指導の時間も対面時間の制限で、直接妊産婦と関わる時間は制限された。また施設によっては、母親と10分以内の同室しかできず、バイタルを測定したら時間切れで保健指導する時間が取れないことも多かった。分娩介助実習は夜間の待機を余儀なくされ、待ちくたびれて朝を迎える日が何と多かったことか。不規則な実習生活の中で約5か月、学生達はどうにか規定の10例の介助を終えて卒業式を迎える。

わが国の出生数は70万代になり、国を挙げての少子化対策が推進されているが、今後ますます少子化は進展していくことだろう。実習施設での少ない分娩を待ちながら学生一人が10例の分娩介助をする実習環境は今後ますます厳しくなることが予想される。 

赤ちゃんを取り上げるというこの技術、学内実習で練習していても、実際の分娩場面では手が震えて立ちすくんでいる学生が、一人でできるようになるには確かに10例は必要だろう。しかし、出産は減り、麻酔分娩、ハイリスク分娩が増え、分娩施設は集約化され実習施設はますます狭き門となっている。江戸時代から産婆として伝承されてきた助産技術、多様な価値観のなかで新しい技術伝承の方向性を見出していく時期に来ているのかもしれない。 

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【教授 齋藤 益子】

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