心理学科コラム

201904.25
心理学科コラム

【心理学部】『心理カウンセリングと夢』

「夢ってなんだろう」という題の絵本があります。私はこの絵本に小学3学年生のときに出会いました。そして、強い印象を受けました。

まず、夢を扱っていることにびっくりしました。それまで、図鑑のような本ならよく見ていました。昆虫図鑑、植物図鑑、動物図鑑にはじまって、恐竜、乗物、山、海、石、星、宇宙、などなど自分をとりまくいろんなものに興味を持っていました。

子どもはみんな図鑑が好きです。今でも、本屋さんに行くと、子どもの本のコーナーには、たくさんの新しい図鑑が並んでいます。
ところが、夢を扱っているこの本は、図鑑とは違いました。昆虫や動物や植物、海や星や宇宙について書いてある図鑑と同じように、この本には夢のことが書いてある。でも図鑑とは違う。なぜか違う。それが不思議で、衝撃的でもありました。
それは、また、「夢について考えることができるんだ!」ということの発見でもありました。もちろん、当時も夢は見ていましたし、この本に書いてある夢が何のことかはわかりました。でも、当時の私は、おばけを真剣に怖がっていたぐらいなので、大人になった今のように夢と現実との区別はなく、そのときそのときで心をとらえるものに夢中になって、ひたすら生きていたようです。

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そんな中で、「夢ってなんだろう」と問いかけるこの本のスタンスは独特で、それまで読んだことのある本とは異質な印象を受けました。表紙の絵も中の絵も、夢という題材にぴったりな不思議な絵でした。言葉にすると「なんじゃこりゃ!」という感じでしょうか。

今、私は心理カウンセリングの仕事をするときに、その方が寝ているときに見る夢を、教えてもらうことがあります。
夢は心のことを理解するうえで、けっこう役に立ちます。それは、たぶん私たちが「夢」と呼んでいる出来事と、「心」と呼んでいる出来事が、非常に似ているからではないか、と今は考えています。

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心理学では、心の内容は意識されるものだけではなく、意識されない内容があって、それを無意識と呼んでいます。
そして夢は無意識からのメッセージと考えられています。「わたしは今度、〇〇のコンサートに行く。前行った時もむちゃくちゃ良かった。〇〇は最高。」「この前、学校であの人に話しかけてみたけれど、話がかみ合わなくて、気まずかった。もう話しかけないでおこう。」
こうした誰もが体験する日常の「私」の体験は、実は、無意識では全く違う体験として味わっている可能性があります。そうした可能性を、夢は少しずつ、私たちに教えてくれます。ただ、多くの場合、見た夢は「なんじゃこりゃ!」と体験されて終わったり、あるいは忘れられてしまうことが多いです。

【心理学部 山本 喜晴 准教授】

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