
心理学科コラム
201905.16
心理学科コラム
【心理学部】『人はなぜ未成熟な状態で生まれてくるの?』
赤ちゃんってとってもかわいいけれど、お世話はなかなか大変です。他の哺乳類に比べて、ヒトの赤ちゃんは未成熟な状態で生まれてくるからです。
どうしてでしょうか?
実は他の類人猿に比べると、人類は巨大化した脳を持っているので、この状態で無事出産するためには、赤ちゃんの脳が小さいうちに、つまり未成熟なうちに産む以外、方法がなかったのです。
移動はおろか、食事など、生命の維持に関するすべてにおいて、長い間養育者に依存しなければ生きていけない赤ちゃん。しかしその一方で、外界の様々な刺激を取り入れる準備ができている感覚器官をもち、優れた学習能力を備えた新しい脳(大脳)を備えて生まれてきます。
この人間特有の特徴が人類進歩のカギを握っているといえます。
ヒトは未成熟で生まれてくるために、親からの絶え間ない養育を受けなければ生きていけません。しかしそのことが親からさまざまなことを学習する機会となるのです。
そしてヒトの赤ちゃんは新しい脳にさまざまなことを書き込みながら、出生後、環境に合わせる形で発達していくことができるのです。
環境に合わせて自由に形が変えられることを「可塑性がある」といいますが、未成熟なヒトの赤ちゃんこそまさしく大きな「可塑性」を有しているのです。
このように無限の可能性を秘めた赤ちゃん。あなたがお父さん、お母さんになったら、どんな環境で育ててあげたいですか?
参考文献:麻生武 「乳幼児の心理-コミュニケーションと自我の発達」サイエンス社、2002年

【心理学部 田中 亜裕子 講師】