社会学科コラム

202106.03
社会学科コラム

【社会学部】季節の音の変化

気象庁に「生物季節観測」というものがあります。全国各地の梅や桜の開花日、カエルやセミなどの初鳴きを確認した日など、植物34種目・動物23種目についての記録です。1953年から始まり70年近く続けられてきたものだそうですが、2020年11月、植物の「6種9現象」を残し、23種あった動物・昆虫の観測はすべて廃止となるという発表がありました[1]。しかし2021年3月末、気象庁・環境省・国立環境研究所が組み、さらに「市民参加型調査」も取り入れ試行調査として継続するとの発表がありました [2]。廃止となることを聞きたいへん残念な気持ちでいたのですが、継続するという報道でひとまず安堵し、またより発展的な方向性が示されていることに大きな期待を感じています。


さて桜の開花日など植物の開花日については、テレビでもよく取り上げられるので知っている人も多いと思いますが、初鳴きなど「音」の記録についてはあまり知られていないのではないでしょうか。これらの記録は、あくまでも測候所付近で観測したものですので絶対的なものではありませんが、このような長年にわたる記録は、自然環境の変化を知る上でもたいへん貴重なものであると考えられます。

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ところで皆さんは毎年、カエルやセミがいつごろ鳴き始めたのか、そしていつごろ聞かれなくなったのかなど「音」について意識したことはあるでしょうか。またそれらが日々どのように変化しているかなど、観察してみたことはあるでしょうか。


季節の区分に「二十四節気(にじゅうしせっき)」というものがあります。1年を24等分(約15日/2週間程度に分割)し、それぞれにその季節にあった名称がつけられており、たとえば立春や春分、夏至や冬至がそれにあたります。また雨水(うすい)や芒種(ぼうしゅ)、寒露(かんろ)といった少し聞き慣れない名称もありますが、いずれも美しい言葉の響きを感じます。

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そうした季節の区分を意識しつつ、日ごろから自然の音の移り変わりに耳を傾けていると、節気ごとの様々な変化を感じることができます。たとえばツバメがさかんに鳴くのを聞き始めてから2週間ほどたつと、ヒナの元気いっぱい鳴く声が聞こえ始めます。また一匹のカエルの声を聞いてから2週間ほどたつと、かなりの数のカエルが競うように鳴き交わすようになり、さらに2週間も過ぎると「大合唱」が夜を包みます。セミの場合はアブラゼミやクマゼミ、ミンミンゼミやヒグラシが重なり合いながらも占める割合が次第に変化し、ツクツクボウシが鳴き終わるころには5つ6つの季節が過ぎたことに気がつきます。


SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まっていますが、その取り組みへの第一歩は身近な環境の変化に関心を持ち観察することではないでしょうか。最近は通勤・通学中に携帯プレイヤーで音楽を聴くことも多いと思いますが、耳休めも兼ね、日常の身近な音に耳を傾けてみてください。どのような都会の片隅でも注意を払えば様々な季節の音の変化を見つけることができますし、そうした音を探し聞く楽しみさえも感じることができるようになると思います。


[1]気象庁:生物季節観測の種目・現象の変更について 令和2年11月10日付

[2]気象庁:「生物季節観測」の発展的な活用に向けた試行調査の開始について 令和3年3月30日付


(社会学部 社会学科 岡本 久)

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