心理学科コラム

202109.09
心理学科コラム

【心理学部】犯罪者になりやすい性格傾向(パーソナリティ)とは?

何かにはまりやすいヒトは要注意、依存症が犯罪に結びつく

みなさんは、なにかに「はまった」経験がないでしょうか。
せっかくダイエットを始めたのに、甘いお菓子を前にして「もう一口だけ」と何度も何度も手を伸ばし、結局一袋を平らげてしまったことはないですか。あるいは、携帯のゲームに夢中になり、夜中までのめりこんでしまい、翌朝はひどい寝不足状態に陥ったことはないですか。
それをやっているときは、とても幸せで満足感・達成感に満たされることもあるし、いくらでも時間や労力をつぎ込んでしまうけど、ふと気づくと、できなかった・失った時間の大きさに後悔を禁じ得ないことになる。つまりは、「わかっちゃいるけど、やめられない」状態の繰り返し。まあでも、その程度ですんでいるなら、まだ大丈夫。問題はそれが進んでしまうと『○○中毒』と呼ばれ、それ以上に状態がひどくなれば「依存症(addiction)」になる。そうすると、もうなかなか抜け出せない。


依存症が直接犯罪に結びつくのは、違法な薬物への依存。覚せい剤やMDMA、最近は若者が大麻で逮捕されることが増えています。薬物依存は何度も再犯を繰り返し、自分が破滅するまでやめられない。芸能人でもそういうことで逮捕されたひとを何人か思いつきませんか。


それから、次に危険なのがギャンブル依存。パチンコ・スロット・競馬、最近ではカジノ、それから高い課金のあるゲームもその一種だから要注意。ギャンブルにお金をかけても、それ自体は犯罪ではありません。
しかし、最初のころにビギナーズラックで「思わぬ儲け」を得てしまうと、それに味を占めて賭け金がどんどん膨らんでいく。いくら損をしても、めげずに取り戻そうと躍起になるから始末が悪い。実際には、賭け金が戻ってくることはほとんどなく、小遣いも貯金も使い果たしてしまう。挙げ句の果ては仲間に借金をしたり、消費者金融に借りてまでも手を出し続ける。それでも負け続けるから、自己破産状態になり、最後は犯罪に手を出してしまう・・・。このパターンは、窃盗や強盗事件の犯人に非常に多いです。


あと、若い男子が疑似恋愛で、キャパクラや風俗の店に通い続け、お金がなくなるとやがて、何が何だか分からないうちに闇バイト(特殊詐欺の受け子など)に手を出してしまうというケースが最近は増えています。
若い女性なら、高価な洋服・アクセサリー・化粧品を次々に購入してしまう買い物依存。身の丈(たけ)に合わない物を身につけると実際の自分以上に輝いて見えるのか、あるいはまわりから受ける「うらやましそうな視線」に優越感を感じるのか。今はネットやクレジットカードで、手元に現金はなくてもとりあえず購入できるからやめられなくなり、やがて大きな負債を抱えこんでしまう。


それ以外にも、社会には「はまってしまう」ようなことが至る所にちりばめられており、誘惑や欲望に勝てない人は無駄にお金を使い続け、自分自身を見失うような行動にとりつかれる危険性が高いのです。


さて、犯罪者に多い性格傾向(パーソナリティ)の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。


「まじめに働こうという意欲が元々なく、就職しても休みがちで、何か不満でもあるとすぐにやめてしまう。
一攫千金を狙ってギャンブルをするが、負けると借金を繰り返す。万事に長期的な見通しを持たず、短絡的で、その場限りの刹那的欲望のまま生きる。我慢がきかず、欲しいと思ったものはすぐにでも手に入れようとして、衝動的な行動(窃盗や恐喝)を繰り返す。
普段から金がないのに、見栄っ張りで気前がよく、仲間におごるのが大好き。でも本当の友達ではないので、自分のことをとめてくれない」


多くの犯罪者に共通する特徴は、ひと言でいえば「自己統制の弱さ」、つまり、自分で自分をコントロールできないということである。


昔は誰も見ていないならまあいいかと言う感じで、多少悪いこともできていたけれども、今は街の至る所に監視カメラが設置されているし、自分では気づかないうちに違法な行為を誰かにスマホで撮影され、SNSを使って匿名で通報される危険性もある。そのためか、人々の規範意識が向上し、セルフコントロールができる人が増えており、今の日本では犯罪がどんどん減少し、治安の良い社会が実現できているといえるでしょう。

 

 

心理学部 心理学科 教授 中山 誠

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