心理学科コラム

202209.14
心理学科コラム

【心理学部】『取調べ』②

『取調べ』①のコラムで「ある一定の罪を犯した被疑者は録音録画と言って取調室でのすべての言動が録画され、その録画記録が裁判を進めていく上での証拠となることもあります。」と書きました。

令和3年警察白書に「取調べの録音・録画制度の運用 令和元年6月1日から開始された取調べの録音・録画制度は、逮捕又は勾留されている被疑者を裁判員裁判対象事件等について取り調べる場合に、原則として、その全過程を録音・録画することを義務付けるものである。」とあるとおりです。

「裁判員裁判対象事件」とは令和3年版犯罪白書に「裁判員裁判(裁判員の参加する刑事裁判)の対象事件は、死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く))であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。」とあります。

一部例外もありますが、基本的に記載の罪に当たる犯罪を犯した被疑者を取り調べる時は取調べの全過程を録音・録画することになります。前述の警察白書には「また、逮捕又は勾留されている被疑者が精神に障害を有する場合(注)の取調べにおいても、必要に応じて、録音・録画を実施している。」とあり、裁判員裁判対象事件ではなくても録音・録画がなされる場合があることが分かると思います。

(注)被疑者が知的障害、発達障害、精神障害等、広く精神に障害を有する場合

この様に、今では取調べが可視化されているものもあり、裁判において録画媒体が実際に証拠採用されている例もあるのです。

取調べには様々なルールがあります。その中でも代表的な例は一般に「黙秘権」と言われるものです。

日本国憲法第38条に「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とあり、言いたくないことを言わなくていい権利、供述を拒否する権利が保障されているのです。テレビドラマで「貴様、だんまりを通すのか!!」と被疑者(犯人)を恫喝するシーンがありますが、「だんまりを通す権利」は憲法に保障されている権利なのです。

そのため、捜査官が被疑者の取調べを始める時には初めに必ず「供述拒否権」つまり「黙秘権」を告げなければなりません。

刑事訴訟法第198条第2項に「前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」とあるとおり取調べを始める際の絶対的なルールなのです。

取調室の整理整頓や、法律で定められたルールをしっかり守って真実を追及するための取調べが始まります。

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【教授 髙橋 浩樹】

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