心理学科コラム

202306.30
心理学科コラム

【心理学部】『取調べ』③

『取調べ』の目的は何でしょう。

もちろん「真実を引き出すこと」「本当の供述を得ること」です。

「秘密の暴露」という言葉があります。

これは「真犯人でなければ知りえない事実」の自白を言います。

よく言われるのが、ある人物が死体を埋めた場所を供述し、その場所まで捜査官を案内して、掘り返すと供述どおり死体が発見されたという場合です。

この場合殺人を犯し、死体を埋めた(法律的には死体遺棄)者、誰かに頼まれ死体を埋めた者、若しくはそれらの共犯者でなければ他の者が知り得るとは考えにくく「秘密の暴露」にあたります。(真犯人から埋めた場所を聞いた者が捜査機関に話をするという場合もないとは言えませんが、よほどの目印があるか、埋葬してから発見までの期間が極端に短く、現場にそれらしい跡がある場合以外正確な埋葬場所を言い当てるのは困難と思われます。)更にその者が、殺害に使用した凶器(例えば包丁やナイフ)を捨てた場所を供述し、そこから供述どおり凶器が発見された場合などを「秘密の暴露」と言います。(凶器に血痕が残っており、そのDNAが被害者のものと一致すれば、犯人の供述を裏付ける証拠となります。)取調べにおいて犯人から秘密の暴露を得ることにより捜査は大きく進展します。殺人事件において「被害回復」はありません。

しかし、ご遺族は犯人の逮捕や犯人が自ら自分の行為を自白し、反省を示すことで今後の人生の区切りが出来、再出発への第一歩になるのではないでしょうか。犯人を逮捕したものの、一貫して否認を続けていると言うことをご遺族が聞けば、苦しみがずっと続くのではないでしょうか。そのために、取調官は犯人から「真実を引き出すこと」に全力を傾けます。自白は「証拠の王」と言われます。しかしその一方捜査機関は犯人から自白を得るために、無理な取調べを行ったとか、取調べそのものが人質司法、冤罪の温床と言われることがあります。犯人(被疑者)にも、供述拒否権をはじめとした色々な権利があり、人権が守られています。そのルールに乗っ取り、真実を引き出すために取調官は様々な準備を行います。また、取調官以外の捜査員も、取調官が犯人から供述が得ることが出来るよう、犯人と事件の結びつきを証明する目撃情報や防犯カメラ等の映像の証拠を幅広く収集します。

取調室で行われる取調べそのものは、通常取調官、補助官(取調べの補助をする警察官等)、被疑者の3人で行われますが、広い意味において『取調べ』は、被害者やご遺族の期待に応えることが出来るよう、その事件の捜査に従事する警察官がチーム一丸となってあたる捜査であると言えます。

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【教授 髙橋 浩樹】

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