心理学科コラム

202307.07
心理学科コラム

【心理学部】『取調べ』④

皆さん面接おいて「ラポールの形成」とよく言われるのをご存じでしょうか。

面接を行う面接官と、面接を受ける受験者との間に信頼関係を作り、話しやすい雰囲気、環境づくりを行うというものです。特に、面接のスタート時においては、受験者は緊張はもちろんのこと「この人たちはどんな人なのだろう」「今からどんなことを聞かれるのだろう」「難しいことを聞かれるのかな」等々頭の中を様々な思いが巡っているでしょう。面接官にしても受験者の糸が張り詰めた状態では、受験者本来の考え方を語らせることは出来ません。受験者が自分の想いを自由に、自発的に話ができる雰囲気づくりは大切です。

カウンセリングであれば、椅子やソファー、明るい壁紙や観葉植物、ヒーリング効果のある音楽、温かい飲み物などが用意されているかもしれませんが、取調べ①にも書いているとおり、取調室は事務机以外何もありません。机上には何も置かれておらず、グレーかベージュのような色の壁があるだけの部屋でもちろんコーヒーや紅茶が出ることもありません。そんな殺風景な部屋の中で、犯人(被疑者)の場合は、通常2(警察側)対1(犯人側)で取調べが進むため、職業的犯罪者(犯罪を生業としている人)や累犯者(何度も警察に捕まっている人)、暴力団員以外は犯人(被疑者)といえども緊張しています。まして被害者や目撃者などの参考人であれば自分が体験したことの恐怖や驚き、取調室の圧迫された空気、取調官の怖い顔(すべての警察官が怖い顔をしているわけではありませんが強面の刑事さんは比較的多いものです。)や威圧的制服姿の警察官を前にして、「楽にして」という訳には行きません。

その様な中で進む取調べにおいてはやはり「ラポールの形成」は大切と言えます。取調べの早い段階で、取調べを受ける者との間に「ラポールを形成」することは、その後の取調べの成否に大きな影響があります。面接であれば、初期段階で話しやすい雰囲気が出来れば、あとは受験者はすらすらと話をしてくれるかも知れません。受験者も自分のことをアピールするために面接に来ているのですから。

しかしながら、面接と取調べが大いに異なるのは、犯人(被疑者)の言いたくないことを言わせる作業が取調べです。自分に不利になることは一切喋りたくない者から、一番触れられたくない事柄を明らかにする、言葉で表現させるのが取調べであり、そんな関係性の相対する者同士が言葉のキャッチボールをスムーズに行うためには、例え取調官と犯人(被疑者)という敵対する者の間であっても信頼関係は大切なのです。雑談であっても、両者の間で会話が進むように、心理学的要素を駆使して取調べは進みます。

次回からは心理学的要素を加えた取調べについて、警察庁が作成した資料を基に筆を進めたいと思います。

関連記事:

【心理学部】『取り調べ』①

【心理学部】『取り調べ』②

【心理学部】『取り調べ』③

【教授 髙橋 浩樹】

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